第46話 チューリップ唐揚げマウンテン
まずは腹ごしらえとなり、ギルド本部の隣にあるエィハスの店へ。
「今日はお腹を空かせてきた」
今は午前一〇時。昼食を兼ねた、遅い朝食となる。
「いらっしゃい! 今日は貸し切りだよ!」
店に入ると、バニングさんが厨房から声を張り上げた。
ボクたちは一番広い席に座らせてもらう。
チサちゃんは迷うことなく定位置に。
もちろんボクの膝の上を選んだ。
「エィハス、ちょっといいかい?」
バニングさんは、エィハスに耳打ちした。
「魔王サマは分かるけど、あの大きな体型の方は?」
「玉座だ。魔王を膝の上に載せる【玉座】という職業らしい」
「あれ絶対、挿ってるよね?」
「し、失礼だぞ母さん!」
テーブルを叩き、エィハスはバニングさんを追い払う。
「でも、すこぶる仲がいいみたいだね」
「そうだな。いつも一緒に活動している。まるで親子のようだ」
ボクたちは、周りからは仲良しに見えているらしい。
「約束のチューリップ唐揚げだ。存分に食べてくれ」
エィハスが、できあがった料理をテーブルに並べる。
山盛りの骨付き唐揚げが、皿の上で湯気を立てていた。
もっとナゲットのようなサイズだと思っていたが、握りこぶしほどの大きさはある。
ボクは、新たに発見をした。
冷し中華は、エィハスの店で出ていたのである。
「いただきます」
早速チサちゃんが、ゲンコツ型チューリップにかじりつく。
語彙力を失ったのか、チサちゃんは「うーんうまい」と言うだけのマシンと化している。
「うん。プリプリですね」
これは、チサちゃんが夢中になるのも分かった。
「表面を覆う魚醤のタレが、いい味してるだろ?」
自慢げに、エィハスが自分の分を口に含む。
魚醤が香ばしく、外はカリカリに揚がっている。
ゼーゼマンたちも、景気づけにと一杯引っかけていた。
チューリップには酒なのだろう。
飲めないボクは、ライスが恋しい。
でもチサちゃんにおねだりなんてできないし。
一方、オンコはチサちゃんと張り合っている。
痩せているのに、すごく食べるなぁ。
あれが女子力というものか?
「お前さんの顔は見たことがあるよ。エィハスの探していた薬草を届けていたな」
冷し中華をすすりながら、ゼーゼマン、ボクに尋ねてきた。
「はい。よく見ていましたね」
ボクも、三角帽子の老人は覚えている。
もっとも、冒険者の尻ばかり追いかけていた記憶ばかりだけど。
「職業:玉座の人間なんぞ、初めて見たのである。よもやパーティを組める機会なんぞ、そうそうなかろう」
ゼーゼマンは、得意げに語った。
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