第43話 ほんとスコ

「ドレン、ダイキは初心者。ダンジョン攻略に協力して」


「無理だな。オレ様にはやってやる義理がねえ」

 ドレンは、力を貸してくれそうにない。


「どうしてもってんなら、オレ様を認めさせな」


 こんな強いドラゴンを認めさせろだなんて。

 あまりの難題に、ボクは萎縮してしまう。


「分かりました。失礼します」

 ボクは振り返ろうとした。


「待ちな」とドレンがボクを呼び止める。

「てめえ、黒龍拳を使えるのか?」


 ボクの背中にあるタトゥーに、ドレンは反応した。

 いささか驚いているかのよう。


「この間、スキルを取りまして」

 同じ龍だから、気になるのかな?


「マジかよ? 黒龍パイセンは、このヤロウを認めたってコトかよ。なんだって人間なんかに加担してやがるんだ、チクショウが!」


「ごめんなさい」


「いいんだ。ちょっと待ってろ、人間」

 ほんの一瞬だけ、ドレンがぼんやりと輝く。


 何が起きるのかと立ち尽くしていたら、ボクの周りに革製の鎧やら鉄製の手甲やらが集まってきた。勝手にボクの身体に装着されていく。ドレンが念力で、ボクに渡してくれたようだ。


「あの、コレは?」




 どう見ても、武装したクマの着ぐるみなんだけど。




「アイテムをしつらえてやった。コーディネートは適当だが。あとは、ゴマトマ鉱山のドワーフ共に強化してもらいな」


「失礼」と、セイさんがボクに寄ってきた。


「しばし拝見させていただきます」

 まるで目利きするように、ボクの装着具をチェックする。


「見た目はただの革鎧ですが、使われているのは魔獣【紫熊シグマ】の革ですね。暑さ寒さに強くなります。魔法も跳ね返すでしょう。鉄の手甲や具足は、単なる魔法金属の寄せ集めです。素材は素晴らしいので、ちゃんとした職人に作り直してもらえば、素晴らしい防具となります」


 誰も、見た目が【デフォルメされたクマの着ぐるみ】であることはツッコまない。

 性能はいいらしいから、別に構わないけど。

 あと、着ぐるみなのに蒸れないとか、地味に高性能だ。


「へん、さすがのオレ様でも、装備の鍛錬はできねえからな」


 すごいなドレンは。

 即席でこんなアイテムを作ってくれるなんて。


「ラストはコレな。よっと」


 最後に、手作りの偃月刀えんげつとうがボクの手に。

 

 偃月刀とは、一言で言えば薙刀の中国版である。


 装飾はシンプルながら、素材がいい。素人のボクにも分かる。

 でも、刃がない。どちらかというと、土を掘るのに最適な形をしている。


「あのー、これどう見てもスコ」


「偃月刀だ」


 有無を言わさぬ言葉を返された。

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