第36話 冷し中華
「そうなんですね」
「その点、チサ様は好きなようになさっておられながら、良き関係を維持してらっしゃる。民のことを思っているからでしょう。あなたも、口出しなさっていない」
「いや、ボクは言う資格がないと思っているだけで」
ボクはまったく知識がない上に、チサちゃんの自主性に任せている。
やりたいようにするのが一番だと思っているから。
効率を求めると窮屈かなと。
「それがいいのかもしれませんね。私も、今後は必要でない限りでしゃばらないようにしてみます。効率化だけがないせいではありませんからね」
ケイスさんは彼なりに、色々と考えているようだ。
せっかくだからと、夕飯も一緒に食べる。
ボクも大歓迎だ。
暑かっただろうからと、冷製パスタを作ってくれた。
魚介のスープがあっさりしていて箸が進む。
「これ、冷し中華だ!」
食感はパスタだが、味は紛れもなく冷し中華だった。
魚醤の風味が最高!
「それにこれ、昨日煮込んだチャーシュー!」
具の中に、刻んだチャーシューを見つける。
火を止めてしばらく寝かせておいたら、コラーゲンたっぷりのチャーシューができあがっていた。味もバッチリである。
「おいしい」
箸を止めようともせず、チサちゃんがはしゃぎだす。
「そうね! プリプリだけど肉って不思議ね!」
魔王たちも、気に入ってくれたみたいだ。
確かに、我ながらうまい。
イノシシの臭みを消そうとチャーシューにしたのだ。
現地の食材だけでうまくいくか正直心配だったけど。
「このチャーシューが、あの技を教えてくれた」
チサちゃんが言っているのは、さっきのヒモ型火球のことか。
「ありがと。ダイキがチャーシューを作ってくれなかったら、わたしはマミに負けていた」
「とんでもない! あれはチサちゃんの発想の勝利だ!」
「でも、ダイキと二人で勝ててうれしい。ダイキすごい」
「ほめてもらって、ボクもうれしいよ。ありがとうチサちゃん」
チサちゃんはチャーシューをおいしそうに頬張る。
「オノロケはそこまでよ。次は大食い対決よ!」
「望むところ」
ズゾゾ、とすごい物音を立てて、二人の魔王が麺を吸い込んでいく。
「よく噛んで食べようよ、チサちゃん」
「ちゃんと噛んでる」
もっもっと、頬を動かして咀嚼している。
成人男性一〇人前食べたところで、両者ノックアウト。
食後のデザートタイムを取る。メニューは、オレンジのパイだ。
「そういえば、アンタの玉座は戦わないの?」
マミちゃんが、チサちゃんに問いかける。
「スキル振りすらまだしていない」
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