第28話 お砂遊びをしよう、砂漠を召喚するね

「本日はよくいらっしゃいました」


「チサ様が玉座様を迎え入れたと聞きまして、マミ様がぜひとも拝見したいと言い出しました」

 馬の状態になったまま、ケイスさんは語る。


「やっぱり、チサがどんな玉座を選んだのか、気になるじゃない? 地球上のどの玉座も相手にしていなかったのに」

 ボクをマジマジと見つめながら、マミちゃんはうなずく。


「図体がデカいだけね! 戦闘力も感じないし、ケンカ慣れしている感じでもないわ。目がオドオドしてるから、気も小さいわね!」


 おっしゃる通りで。


「でも、慈愛に満ちたマナで溢れているわ! マナの総量で言えば、ケイスなんて軽く上回っているかしら? チサの目に狂いはないわね!」


 マナに優しさなんて出ているのか。自覚はないんだけど。

 蓄積量もケイスさん以上だなんて。


「ケイスさん、どうなんでしょう?」


「お手合わせしてみないと分かりません。ですが、正直戦いたくない相手ではありますね。お互い仲良く接しましょう」


「はい。そうですね」

 ボクも争いは好まない。何事もないのが一番だ。


「お召し上がりください」

 メイドさんが、ビスケットとオレンジジュースを追加する。


「いただきまーす!」

 マミちゃんは、ビスケットをバリバリ食べて、オレンジジュースで流し込んだ。


「かーっ! この一杯のために、アタシは砂漠を越えてきたのよ!」


 ケイスさんを馬の状態にさせたまま、マミちゃんはビスケットを食べさせた。

 優しいのかドSなのか。


 ケイスさんが「ありがとうございます」って言っているから、喜んでいるのだろうけど。


「さて、やるわよチサ!」

 お腹が膨れたのか、マミちゃんは食器をテーブルからどかした。


「うむ。遊ぼう」

 ちゃぶ台を囲んで、二人は向かい合う。


「あの、ケイスさん、これから二人は何を始めるので?」

「大惨事砂遊びです」


 数名のメイドさんが、ちゃぶ台をどかした。


 二人が座る床には、何も置いていない。

 砂遊びと行っているのに、砂なんて一粒もなかった。


「待ってください。砂遊びなんですよね? 砂はどこに?」

 ケイスさんに答えを求めた。


 まさか、どこかから運んでくるとでもいうのか?


「砂ですよね。今から呼ぶのです」


 随分と不可解な回答が飛んできたぞ。しかし、ボクを煙に巻くような雰囲気ではない。まじめに言っていると分かる。


「まあ、見ていてください」

 ケイスさんは、意味深な顔をして答えた。


 チサちゃんとマミちゃんが、広々とした床に手をかざす。

 リビングの中央に、巨大な砂場が出現した。

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