第三章 ボクの知っている砂遊びと違う!

第27話 もう一人の魔王 マミちゃん

 ボクたちのいる場所は、客間だ。ちゃぶ台で、お茶をしている。


「チサちゃん、今から敵が来るんだよね? こんなにのんびりしてていいの?」


 襲撃される側のチサちゃんは、えらくリラックスしていた。


「ダイキ様、構える必要はございません。あくまでも遊び相手ですので」


 セイさんも、落ち着いている。


 まあ、電話で「攻めに来ます」って言ってくる相手だから、そんなに構える必要なんてないか。


 それでも、油断はできないよね。


「ボクはどうすればいい?」


「ちゃんと見ていて」


 そっか、見守っていてくれって意味かな。


「まずルールを覚えて欲しい」


 ああ、そういうことか。


「遊びに来たわ!」


 一人の少女が、栗色の髪を振り乱して、リビングに上がり込んできた。

 傍若無人が歩いているような子である。

 動く度、マントがはためく。


 栗色の髪を持つ少女は、ゴーグルを外した。


 挑戦的な碧眼が、チサちゃんを見据える。

 最も印象的なのは、顔の日焼けした痕が目立つところか。

 着ているワンピースやデニム地のショートパンツからも、日焼けの痕が覗く。



 

 だが、ボクの視線はある状況に釘付けとなった。




 四つん這いになった男性が、少女の馬代わりに歩いているのだ。

 痩せていて、胸板も薄いが、貧相な感じではない。




「あの子は?」

「もう一人の魔王、マミ・ニム様です」



 マミちゃんは、魔王という割に、いでたちはヒーロー・勇者風である。


 この子が、戦争をふっかけに来たってコトかな? 

 それにしては賑やかな子だ。まるで敵意を感じない。


「お待ちしておりました、マミ様」

 セイさんが、二人を迎え入れる。


「どうも。今日もよろしくお願いします」

 マミちゃんの玉座さんが、ボクたちの前まで来て頭を下げる。


「ダイキです。チサちゃんの玉座をやらせてもらっています」

 こんな状態のままですいません、とボクは断りを入れた。


「これはご丁寧に。初めまして、チサ様の玉座様。私はマミ・ニム様の玉座で、ケイスと言います」


 イスと言うより、馬と言った方が正しいのかな。


「アタシはマミ・ニム! よろしくねダイキ!」

 ボクたちと握手しようとして、マミちゃんは引っ込める。

 手が汚れていることに気づいたからだ。


「お手洗い貸してね!」

 行儀良く、マミちゃんはお手洗いを借りて手を洗う。


 ケイスさんも手を洗うが、すぐ手を地に着けたので、また手が汚れてしまった。どうするのだろう?


「マミ様、抱っこをしても?」

「OKよ! お好きになさい!」


 一旦マミちゃんを降ろし、ケイスさんはまた手を洗う。

 マミちゃんを抱き上げ、ボクと握手を交わした。

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