第26話 魔王一等賞決定戦?

「そうですか。では、チサちゃん以外の魔王って、どこにいるんですか?」

「こことは違う時空にいますよ」


 セイさんは「説明は難しいのですが」と前置きして、語り出す。

「何本ものゲームソフトがお店に並んでいますでしょ。RPGだけでも、一本の世界に魔王が一体います。そのようなものです」


 分かりやすいような、分からないような。


「平行世界ってヤツですか?」

「アバウトに言えば、その通りです」

「どうすれば会えますか?」


「なぜ、そんなに気になさるので? もしかして、他の魔王にも会いたいのですか?」


 どうして、そんな飛躍をする!?


「うわき?」

 チサちゃんが反応した。


「よもや、チサ様だけでは物足りないとか、少々贅沢が過ぎるかと思います」


「いやいや違いますよ。世界の仕組みが知りたいだけです」


 ボクだって、ホイホイと会えるなんて思っていない。


 セイさんは「そうですね」と、アゴに手を当てる。

「こちらから別の世界に赴くか、向こうからいらっしゃらないと、まず会えませんね」


 乗り込んでくる魔王までいるのか。

 できれば会いたくないかな。


「血は繋がっているのですか?」


「いいえ。ですが魂は繋がっています」



 チサちゃんの母親は、同時期に生まれた子どもたちに、自分の力を分け与えた。その数は一万人を超える。


「他の異世界って、どんなところなんでしょう?」

「色々です。ワタクシも行ったことがないので、

「なんのために、そんなことを」



「最強の魔王を作り上げるためです」



 やがて、すべての魔王が領土を巡って、争うという。


 一等賞になった者が、すべてを手に入れるらしい。

 あくまでも、異世界で語られているウワサだが。


 物騒だなぁ。もっと平和的になれないものか。

 ウワサレベルで終わって欲しい。


「一等賞を決めるための手段は?」

「戦争をします」


 ボクは、ゲホゲホと咳き込む。


「マジですか?」

「まあ、娯楽程度なので。おっと」


 話していると、やけにクラシックな電話が鳴り響く。

 セイさんが、受話器を取った。






「もしもし。はい、はい。承知致しました。では明日」

 セイさんが受話器を降ろす。





「誰からでした?」



「もう一人の魔王さまからです」



「なんて言ってきた?」

 魔王としての本能が騒ぐのか、チサちゃんがそわそわしている。



「明日の朝、お見えになるそうです」



 ボクは、ツバを飲んだ。



「ちょうど、戦を見る機会ができました。ご覧なさいますか?」


「待ってください!」


 壮大な殺し合いなんて、子どもにやらせるのか。


「どうも、魔族の戦争を誤解なされているようですね。ちょうどいいです。お見せ致しましょう」


「チサちゃん、大丈夫?」



「平気。わたしは、負けない」



 いや、そういう意味じゃなくてさ。 

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