第23話 猪鍋

 家に帰ったら、混浴タイムだ。


 できれば精神衛生上、一人でのんびりと入りたい。

 しかし、ボクがいないとチサちゃんが本領を発揮できないというなら、仕方がなかった。


 お互いの身体を洗い合い、湯船に浸かる。


 見慣れない寝間着が、更衣室に置かれていた。

 薄い毛糸のTシャツに、膝までのステテコだ。

 コレを着ろと? 

 

 身につけてみると、涼しい気分になった。

 この優しい着心地は、風呂上がりに丁度いい。

 これはよく眠れそうだ。


 更衣室から出ると、チサちゃんの服装が変わっていた。

 淡い紫の毛糸で編まれた、半袖とショートパンツルックになっている。

 袖と裾はモコモコ付き。


 ボクの着ている服と、ペアルックになっている。


「街で買ってきた、おそろい」

 冒険の報酬で手に入れたらしい。


 確かに、ボクたちの服装は色違いだ。

 チサちゃんはナイトキャップまで被っている。


「かわいいね」


「ありがと」

 服を褒めると、チサちゃんも嬉しそうな顔になった。


「ダイキも似合ってる」


「うん。ありがとー。チサちゃんは優しいね」


 ボクが笑うと、チサちゃんがはにかむ。


 疲れを取ったら、夕飯だ。


「お肉だ!」

 夕食は、猪鍋だった。

 ちゃぶ台の上で、グツグツと土鍋が音を鳴らす。

 土鍋の中では、ピンク色の肉が野菜のドレスを着て踊っている。


「農地にイノシシが現れたので、退治依頼がきたそうです。どこのどなたかが退治してくれたそうで」



 このボタン肉は、そのお礼だとかで。



「えへへ」

 ボクは頭をかいた。


「ありがとうございました。大毅様。おかげで村は救われました」

 チサちゃんに続いて、ボクのお椀に、セイさんが具を入れて渡す。


「とんでもないです。みんなが無事ならそれで」


 村で起こったトラブルは、できるだけ解決したい。そう思っただけだ。


「セイさんもどうぞ」

「いただきます」


 ボクたちの分をよそい終えたセイさんが、自分のお椀に鍋の具を入れていく。


「なんなら皆さんも」

 お世話になっているメイドさんたちにも、催促してみた。


「ご心配なく。彼女たちの分もちゃんとありますので」

「そうですか」


 一緒に食卓を囲めないのは残念だが、こんなにおいしいイノシシを食べられるならいいか。


「ところでチサ様、マナをお使いになりましたか?」

 チサちゃんのおかわりをお椀によそい、セイさんが問いかける。


「使った。ほんの少しだけど」


「ほんの少しマナを放出しただけで、これほどまでに巨大なイノシシが現れるとは。末恐ろしいですね」


 意味深な会話をしながら、ボクたちは猪鍋をつつき合う。

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