第24話 賢者タイム
「大毅様、今日はチサ様について行って、大変だったでしょう? マナ放出のお手伝いもなさったとか」
「今日は疲れました。ドッと疲労感が出たのですが?」
魂が抜け落ちていくような感覚といえばいいか。
この地に来て、初めて体験した。
まんま、久しく忘れていた快感である。
「いわゆる、『アレ』の疲労みたいだったでしょ?」
「アレとは?」
「いわゆる『賢者タイム』とでも申しましょうか」
ボクは鍋の具を吹き出す。
よく、チサちゃんにかからなかったものだ。
「大丈夫、ダイキ?」
いきなり咳き込んだボクを心配してか、チサちゃんが声をかけてくる。
「平気だよ。ごめんねチサちゃん」
むせながら、ボクはちゃぶ台を拭く。
「聞けば、一〇〇メートルを全力疾走した時と、同じだとか?」
ボクのお椀に具をよそいつつ、セイさんは艶めかしい視線をボクに送ってきた。
「ええ、そうですね」
余計なことは言わない。ボクは沈黙する。
「ダイキって、賢者なの?」
興味津々の様子で、チサちゃんが聞いてきた。
「いいから、食べててくださいね。冷めちゃいますから」
この手の話題は、まだチサちゃんには早すぎる。
「大毅様、それはあなたが、マナを消費なさったからです」
ボクのマナを使って、チサちゃんは薬草を育てたのだという。
「やみつきになりそうですか?」
「とんでもない。ボクはそんな快楽主義者じゃない」
そう何度も、あの感覚は体験しちゃいけないんだろうなって思った。
自分の欲求のために、マナを発動させようなんて思わない。
「あなたがそのような方で、安心しました」
セイさんが一礼する。
「農地被害がイノシシ程度で済んでいるのは、大毅様のように、人間のマナを使ったからなのです」
「そうだったんですね」
薬草を活性化させることは、チサちゃんのマナにもできた。
だが、魔王クラスのマナでは育ちすぎてしまう。
また、土壌も元気になりすぎて、モンスターまで湧く事態に発展してしまう。
「魔王と言えど、ウカツに自然界へマナを発生できない理由は、ここにあります」
自然界に奇跡をもたらすには、それなりのリスクがあるらしい。
「なんでもかんでも魔王の魔力で解決!」
とはいかないのだなぁ。
「ましてやチサ様はサキュバスです。あのレベルのマナを放出させる際に引き出す快感は、計り知れません。その威力は麻薬をも上回るでしょう」
サキュバスタイプの魔王候補に玉座として認められた者の中には、快感を得たいがためにマナ放出を急かす輩もいるのだとか。
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