第22話 玉座の特性

「どうなさいました?」


「なんで、薬草採りの依頼でレベルが四〇も上がってるの? 不正をしてませんか?」

 ヘナヘナと、受付嬢がへたり込む。


「これが『ジョブ:玉座』の怖さだ」

「あっという間に、レベルが一気に上がるのか」

「魔王サマの手伝いをしただけだってのに」

「でも、どのステータスが上がるかは謎だからな」

「オレもチサ様を抱っこしたい」

 事情を知る冒険者たちが、口々にボクをウワサした。

 一人、欲望丸出しの奴がいるが。


「彼は玉座。彼のマナを使って、土地を一部だけ開発した」

「そういう事情でしたか。承知しました。では正当な理由ですね」


 ボクの把握が追いつかないところで、話がドンドンと進んでいく。 


 依頼料を得て、チサちゃんは「用事があるから」と、服飾店へ向かった。

 自分へのご褒美に、服を買うのかな。


「おまたせ。今日はこれで終わり」



 村へ帰ろうとしたとき、一人の農民がギルド詰め所に転がり込んだ。



 今度はなんだろう?



「イノシシが出た! カボチャを食おうとしている!」


 また、チサちゃんが飛び出す。


 今度は、ボクも慌てない。

 追いつけるようにチサちゃんの背を追う。



 村に戻ると、大きなイノシシがカボチャ畑に突っ込もうとしていた。


「離れて、ダイキ!」

 ボクの身を案じてか、チサちゃんが自分でなんとかしようとしている。


 いくらなんでも、こんな小さな子にイノシシと戦わせられない。



 ボクに力があれば。



「いや、チサちゃんはみんなを安全な所へ」

 武器を取りに行っている暇もない。

 ボクは丸腰で、イノシシに立ち向かう。



「来い!」



 イノシシ相手に、ボクの柔道がどこまで通用するか。



 けど、ボクは負ける気がしなかった。


 イノシシのステータスが見えたからだ。

 レベルは二、分類は野生動物である。


 対して、ボクのレベルは四〇だ。


「ってええええ!」


 結果、ボクは低空タックルからの裸締めで、イノシシを倒してしまった。


「はあ、はあ!」


 疲労感はない。興奮で、息が上がっている。

 イノシシから身体を離されるまで、自分が勝ったと分からなかった。


 村人たちの歓声によって、我に返る。


「何度も助けていただいて、ありがとうございます」


「い、いえ」

 息を整えることで精一杯で、村人の感謝にうまく反応できない。


「すぐに解体します! 持って帰ってください」


「ありがとうございます。でも、村のみんなで分けてください」

 頭を下げて、ボクはその場を離れた。


 チサちゃんが、手を差し伸べてくれる。


「ありがとうチサちゃん、帰ろう」

「うん、ありがと」


 ボクはチサちゃんの手を引き、家路に向かう。

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