第18話 魔物:ヤクソウモドキ
「あなたがバニングさんでしたか」
エィハスさんがうなずいた。
「依頼を受けたのか?」
「はい。ボクは大毅って言います。この子はチサちゃん」
エィハスさんは安心した顔になって、近くの薬草に手を伸ばす。
「薬草はここだ。私のことはいいから、摘み取って欲しい」
「そうはいかない」
チサちゃんはしゃがみ込んで、エィハスさんのクツを脱がした。
「汚染されている」
チサちゃんの言うとおり、エィハスさんの足の裏にカビが生えている。見ていて痛々しい。
「私はいいんだ。ミスなんだから」
「ダメ。治す」
エィハスさんの静止も聞かず、チサちゃんは足に手をかざした。
足を覆っていたカビが、瞬く間に浄化されていく。
「すごい。もうダメかと思っていたのに」
「発見が遅れていたら、足首から先を切る必要があった」
ひえええ。
「ありがとう。それより薬草を」
エィハスさんが薬草に手を伸ばそうとした瞬間だった。
チサちゃんが、手に持った杖をスピンコックみたく一回転させる。
杖の先から火の玉を出して、草を燃やす。
一瞬の出来事だった。
「何をするんだ!」
エィハスさんが怒り出す。しかし、チサちゃんは動じない。
「あれは薬草じゃない」
「なんだって?」
「形は似ているけど、あれは悪いモンスター」
さっきの草は、『ヤクソウモドキ』という毒の魔物だとか。
「多分、周りの土壌を踏んであなたの足が穢れた」
薬草に見せかけて、近づいてきた冒険者を腐らせた土に沈めて、養分にするらしい。怖い攻撃をする奴がいるものだ。
炎の着弾ポイントを見る。
紫色だった土壌に、土の色が戻っていく。
「そうだったのか。疑って悪かった」
エィハスさんが、非礼を詫びた。
「落ち込んでいる場合じゃない」
チサちゃんは首を振る。
「本物を探す。ヤクソウモドキの生えている土は、少しだけ紫色がかってる。すぐに分かると思う。襲っては来ないから、近づかなければ大丈夫」
「分かった。探してみるよ」
ボクたちは、手分けして薬草を探した。
でも、ヤクソウモドキばかりである。
「あった」
歓喜の声を上げて、チサちゃんは目の前に生えている薬草を引っこ抜いた。が、瞬時に落胆する。
「依頼にあった、子どもの病気を治す薬草って、これ?」
「そう。だけど、これは使えない」
あまりいい薬草ではないのが、素人のボクでもわかった。
やけに根が細い。
「マナが行き渡ってない」
細い根を見て、チサちゃんは原因を見抜いた。
「マナなら、自然界に任せれば」
「そんなに、マナは万能じゃない」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます