第二章 新しいお友達ができました

第15話 デート?

 今日は、ルセランドという街へ繰り出す。



 チサちゃんの出で立ちは、ちょっと魔法使い風である。

 ローブを纏い、宝石をあしらった木の杖を装備していた。


「街はまだ、発展途上」


 チサちゃんが管理しているのではなく、人間の王様が街を統治しているのだとか。


 大きい順にオレンジジュースの店、パン屋さん、カボチャ売り場である。

 一番小さいのが薬草やポーション売り場だった。


 平和すぎて、誰もケガをしないからだろう。

 病気もしなさそうだ。


 街と言うより、ちょっと大きな村程度しか発達していない。

 道も整備できておらず、まだまだ改良の余地がある。


「向こう側にある街の方が、発展している」

 まだ、ボクの知らない世界が広がっているのか。


「ちょくちょくお出かけして、これから自分の街も大きくしていく」


 幼いながら、チサちゃんは人生設計ができている。


 とにかく、午前中は挨拶回りに費やされた。

 来る人来る人に、頭を下げまくる。


 山がよく見えるテラスで昼食に。


 焼いた川魚と、羊を使った肉料理である。

 あとは豆のスープくらい。

 お米はないみたいだ。穀物は、小麦か豆類が主流である。


 やはり、チサちゃんはボクの膝上がお気に入りらしい。

 当たり前のように、ボクの前に座る。


「あの山は薬草が採れる。あっちの山は健康にいいキノコが大量」


 食べながら、チサちゃんは土地を指さして説明してくれた。


「こうしていると、まるでデートしているみたいだなぁ」

 うっかり、ボクは言葉を零してしまう。


 チサちゃんが、顔を隠した。耳まで赤くなっている。足をバタバタさせ、体温も熱い。


「ああ、ゴメン。無神経だったね」

 こんなオッサンとデートなんて虫酸が走るよなぁ。


「いい。もう落ち着いた。ふぅ」

 チサちゃんは、胸を押さえて興奮を収める。

 吐き気かも知れないけど。



「気持ち悪いよね、ボクなんかとデートって」

「違う。キモくない。楽しい」

「そっか。ありがとう」


 お世辞でも嬉しい。


「じゃあ、チサちゃん。海は、あるのかな?」


 この辺りは、山々に囲まれていた。

 愛媛に住んでいたので、海が少し恋しい。

 都会でもあまり見られなかったな。


「あっちの山に、湖ならある。この魚も、そこから捕ってきた」

 平たい魚の燻製を、チサちゃんが広げた。


 ボクにかじれと勧めてくる。


 お言葉に甘えて、ボクは燻製を丸かじりした。


 身がしっかりしている。

 塩だけの味付けなのに、うまみも出ていた。

 噛めば噛むほどに、濃厚な味わい。


「それは、持っている人に会ったことがない」

 意味不明な言葉が、チサちゃんから出てくる。


 海を持っている人がいるの? 

 港を所持しているなら分かるけど。


 デザートは、魔法で凍らせたオレンジジュースを削った、フワフワかき氷が出た。

 甘酸っぱくて美味しい。

 塩気が濃いめの料理ばかりが出たから、サッパリしたデザートが嬉しかった。


「またデートしよう」

 ためらいなく、チサちゃんが誘ってくる。


「は、はい。デートしようね」

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