第11話 スーパー風呂タイム
帰宅直後、セイさんが飛んでくる。
「あらまあ、泥だらけではありませんか。おまけに汗臭いですわ」
「すいません」
ボクは頭をかく。
「お二方、お風呂入っちゃってください。ちょうどお湯が沸きましたので」
「はい。ありがとうございます」
お風呂場まで案内してもらう。
更衣室は別々だ。扉の枠が、青と赤に分かっている。
チサちゃんは赤い枠の中へ。ボクは青い枠に向かう。
「男女別におフロがあるなんて、ぜいたくだなぁ」
汚れ物をカゴに入れて、引き戸を開ける。
「温泉だ!」
扉をあけると、そこは露天風呂だった。
この世界には、温泉の文化があるのか。
汚れを落とすために、洗い場へ。
蛇口やシャワーはない。
が、滝のように流れっぱなしの打たせ湯がある。
オケは木製だ。
木の板をくくった作りで、持ち手があるタイプである。
昔ながらの。
打たせ湯で軽く身体の泥を落とす、ひとまず、頭を洗おうかな。
「さすがにシャンプーはないよね。あれ、あった。これかな?」
ボクは、緑色の液体が入ったビンを手に取った。
少量を手に垂らして、頭に近づけていく。
「違う。それはひげ剃り用の薬品」
液体を頭に付けようとした手首を、細く白い手が止めた。
「チチチチ、チサちゃん!?」
チサちゃんが、ボクの手首を掴んでいる。
バスタオル一枚という、心許ない姿で身体を隠していた。
オケにボクの手を突っ込ませて、液体を洗い流す。
チサちゃんはオケの湯を捨て、入れ替えた。
ボクは空いている手でタオルを持ち、デリケートな部分を隠す。
「すいません、セイさん! セイさーん!」
「どうなさいましたか?」
セイさんが、ボクたちの目の前にワープしてきた。
「うわあ!」
慌てて飛び退く。
またボクは内股になって身を隠す。ポロリは免れないと!
「大毅様、別に隠さなくても結構です。ワタクシ、成熟した男性に興味はございません。少年が好みですので」
この人、さりげなく性癖ポロリしたぞ!
「おフロって普通、男女が別なのでは?」
「何をおっしゃいます。お二人ご一緒に入っていただきます」
「え?」
とんでもないことを言い出したぞ。
「待ってください。混浴ですか?」
「申し上げたとおり、魔王と玉座は一蓮托生にございます。いつ何時も、側に仕えていただく必要がありまして」
「だからって」
「さすがに、お手洗いまでは別ですよ」
そりゃそうだよ! 今日分かったし。
「どうか、お気になさらず。チサ様も、あなたとのご入浴はお嫌ではありませんし」
イヤじゃないならいいけど。
「では、お二方のお時間を邪魔したくありませんので、ワタクシはこれにて」
セイさんは、またワープしてしまう。
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