第21話・ビリオンデュエルの始まりですデュフフ

『お待たせしました! ただいまよりゲームセンター・ユーザーチーム対興行レスリング研究会の番外対戦、エキシビジョンマッチを開催します!』

 壁の大型液晶モニターに、新たなゲームが映し出されました。

「「「おおお――――っ‼」」」

 表示されたのは80年代中盤の、BGMが3連モニターで有名な大ヒット横シューの1面に流用された、傑作ロボットアクションシューティングゲーム。

 1作目がお蔵入りになって、いきなりⅡがリリースされた珍品です。

『挑戦者の大石伊和いわ選手、席についてください!』

 例によってダンボールに顔を突っ込む大石先輩。

 今回は急ごしらえなので調整が間に合わずフリープレイは不可、100円玉の投入が必要です。

 2人プレイは交代制で、しかも画面が上下逆になってしまうので、今回はナシ。

 たぶん大石先輩はノーミスクリアしてしまうので、2Pプレイに設定しても、わたしの出番は回って来ません。

 おそらくこの勝負は、どれだけステージを進めるかではなく、全ステージクリアまでの集計ポイントで決まるでしょう。

『それではスタート!』

 先輩がテーブル筐体きょうたいに百円玉を入れると、軽快なズンタタミュージックが中断され、プレイ開始となりました。

 画面上に銀と赤の巨大ロボットが現れ、のっしのっしと歩きます。

 走りませんし飛びません。

 格闘どころか障害物に触れると壊れます。

 ただひたすら8方向にショットと往還おうかんパンチを撃つだけの地味なロボさん。

 しかし、いままでのプロレスゲーが単調すぎた反動か、ギャラリーのみなさんは盛り上がっていました。

「なかなかやりますね先輩」

 大石先輩のロボは往還パンチを撃ちながら、ショットで敵機を丁寧ていねいに撃ち落として行きます。

 このゲームの特徴は、縦シューでありながら、横方向に動くと背景もズレるステージ幅の広さにあります。

 基本は一本道で、路上の施設を破壊し、左右の森で地上からの攻撃をけつつ飛来物を撃破。

 地上の攻撃が出るか出ないかの位置から施設を破壊するのがコツ。

 ちなみに建造物は自動修復されて攻撃を再開するので、さっさと先に進んだ方がお得です。

 1UPワンナップアイテムをゲットすると、重厚ながらも単調だったBGMが、デモ画面で流れていた軽快なズンタタミュージックに変わりました。

「手慣れてますねぇ」

 全方向アクションに強いという大石先輩にはピッタリなシューティングゲームと言えるでしょう。

 しかしロボはダメージが蓄積ちくせきしたのか赤く点滅し、ついに爆発。

 頭部が脱出して戦闘機になりました。

「あっ……これ、わざとですね」

 直後に敵の格納庫を対地攻撃で爆破し、たちまち中のロボと合体します。

「1千万点ボーナスは無視ですか」

 このボーナスは【ロボを破壊されずにステージクリア】が条件なので、狙いは他にある事になります。

 一定条件で出現するフラッグやプレートを破壊しつつ、先輩のロボは敵要塞っぽいところに進入しました。

 そしてステージボスは……別メーカーの超有名縦シューに出て来た普通の建造物っぽい大ピラミッド!

 飛びませんし弾幕もありません。

 おまけに周囲には砲台っぽい小ピラミッドが4つ配置され、類似品パチモン臭を際立きわだたせています。

「先輩……やっちゃいますか? やっちゃうんですよね?」

 期待に胸がふくらみます重いです。

 大石先輩はしばらく適当に戦ったあと、中央のボスピラミッドを難なく破壊しました。

 ステージクリアで画面が暗転します。

「「「…………えっ?」」」

 ギャラリーのみなさんは、まさかあれがボスだとはまったく気づかず拍子ひょうし抜けした模様。

「これは……出ますかね?」

 黒い画面に、いままで撃墜した各種プレートと、出現させたフラッグの集計、そして【―――GREAT―――】の文字が表示されました。

 ―――1億点のボーナス。

「「「おおおおおおおお――――――――っ‼」」」

 0の多さに会場がどよめきました。

「まさかこの辺境で1億点ボーナスを出せる人に出会えるなんて……」

 わたしもビックリ仰天ぎょうてんです。

 このゲームは0から7までの8ステージ存在し、合計8憶点まで出せる勘定ですが、わたしの腕では3億が限界です。

 果たして先輩は、どこまで出せるのか。

 こうなってしまうと、もはや億より下のけた端数はすうでしかありません。

「これは1億点ボーナスの集計で勝負が決まりますね」

 きびしい勝負になって来ましたわくわくします。

 ふと手を見ると、汗でぐっしょりとれていました。

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