第20話・それでは戦闘開始ですデュフフ
「こんなところにいたんですね」
店内に姿がないと思って表に出ると、裏側の……正確には自宅側の表門に、
普通ならメイド服で屋外に出るのは男子にとって致命的ですが、周囲は
「……なんかいる」
物陰に複数の気配を感じました。
おそらく
「
女子なのでカムヒアは我ながら
パチリを指を鳴らすと、奥からササッと現れた真緒姉が海さんを引きずって、獲物を巣へと連れ去るクリーチャーのように、無音で
「これでゆっくりお話ができますね」
わたしは紫焔くんを自宅側の庭へと連れて、
「相談事とお見受けしました。海さんの事ですね?」
紫焔くんを隣に座らせると、なんかお顔が真っ赤になってました。
「海ちゃ……いえ内藤さんですけど、まだ
「ほうほう」
妙に聞きわけがいいと思ったら、
「でも殺気は感じませんでしたよ?」
武術に縁のないわたしですが、これでもゲーマーなので、画面の向こう側にいる対戦相手の殺気くらいは読めるのです。
「殺す気はもうないみたいですけど……僕と先輩を、その……」
「…………?」
「あのその……くっつけようとしてるみたいで」
「ああ、そっち⁉」
なるほど、わたしを殺害して勇者を異世界に連れ帰る目的が
さっき隠れていたのも、わたしと紫焔くんをラブラブさせる計画の
「わたしに殿方とイチャイチャする趣味はありませんよ? 紫焔くんがお
「なんで
ベッドインしたところをこっそり
「できれば我が家でイチャラブしてください。わたしはドアの陰や天井裏から、じっくりねっとり
「遊佐先輩は男です! 僕も男です!」
ミニスカメイド姿では、まるで説得力がありません。
「では真緒姉なら……まあ冗談はさておいて、紫焔くんは海さんがお好きなんですよね?」
それを聞いて、紫焔くんの頭からシュボッと
「……わかりますか?」
「気づいてないのは
「わかりません」
それがわかるなら、わたしに相談なんてしないでしょう。
「わたしにも、どうすればいいかなんて……いえ、まあ大丈夫ですよ。いくら海さんでも、文芸部で調教を受けてるうちに、嫌でもご理解いただけるでしょうから」
「……………………??」
そう、海さんはいずれ知る事になるのです。
わたしが紫焔くんとイチャイチャする可能性は皆無で、ただひたすら紫焔くんとイケメンさんのイチャラブを望んでいる、という
そして海さんが旧図書室予備倉庫の隠し本棚を見つけて『紫焔くんを文芸部に近づけるのは危険』と察知するのは時間の問題です。
「お話はわかりました。小路ちゃんには裏でわたしが協力を要請しておきますから、紫焔くんはなにもしなくていいですよ」
「なにも? いえ僕も協力しないと……」
「むしろ、なにも知らないフリをしてください。いずれ海さんの方から、わたしと紫焔くんを近づけないように動くと思いますよ」
わたしはただ、紫焔くんを腐男子化させようとBL本をチラつかせるだけでいいのです。
海さんにわたしを危険人物と認識させれば、わたしの勝ち。
もちろん紫焔くんが本当に
「そのうち文芸部から一緒に逃げ出そうとか言い出しますから、その時に告白なりチュ~するなり押し倒すなりしちゃってください」
これで海さんが男子だったなら『そのうち』なんて
「押し倒す⁉ 僕、そんな事できないよ!」
海さんの方が強そうですからね。
「力で押すのではありません。ラブラブな雰囲気で押しまくるのです体育倉庫とかで。なんなら文芸部室を使ってくれても構いません」
「……………………‼」
具体的なイメージが伝わったのか、紫焔くんの
「とりあえず予行演習しましょう。ほらわたしコンパクトで練習相手にはうってつけでしょう?」
弱点であるお腹の
ついでに両腕でお胸をモフモフ
「……秘儀【
お胸の間に空気を
年末年始でわたしが得意とする宴会芸です。
ちなみにウケた試しはありません。
「無理無理無理絶対無理~っ!」
短いメイドスカートをヒラヒラさせながら。
中の白ブリーフ&ガーターベルトをチラチラさせながら。
なかなか特殊
「……まずは1勝」
ガッツポーズを取るわたし。
「色恋は複雑ですからね。念には念を入れて、まかり間違って紫焔くんがわたしを好きになる可能性から排除して行かないと」
少女漫画によくあるパターンは御免ですからね。
海さんとの戦いは、すでに始まっているのですよ。
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