第13話・ごろごろにゃ~ん♡

 ごろごろごろごろ。

「おにぃ~、ヒマだから構ってよ~」

 ごろごろごろごろ。

「いまはプロレス研が練習してるからダメだ」

「あっちは真緒姉まおねえと電子研がいるからいいじゃん~」

 ごろごろごろごろごろごろごろごろ。

「大人しく勉強でもしてろ。あとベタベタするな」

「むうっ、おっぱいでは通用しませんか」

「お前のは腹と変わらん。いや腹が3つあるようだ」

 お兄も理央さんとおんなじ事言うんですね。

「ビキニ着れない体だからって平然と……こうなったらもっとりつけちゃいましょう」

 ごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろ。

「ええい暑い! 宿題見てやるから離れろ!」

「やったー‼」

 ここは店内から扉一つはさんだスタッフルーム兼お茶の間。

 かいさんたちの練習中はひまを持て余して予習と携帯ゲームしかできなかったわたしですが、プロレス研に交代してお兄が戻ってきたので甘えまくっていました。

「ところでお兄、海さんたちはちゃんとゲームできましたか?」

 ごろごろごろごろにゃにゃ~ん。

 引きがされてしまったので、とりあえず転がってからの降参ポーズでお茶をにごしてみます。

「当然だ。筐体きょうたいは問題なく動作している」

 お兄のお顔はれがだいぶ引いて、元のイケメンさんに戻りつつあります。

「そうじゃなくて、まともに操作できたかってお話です」

「そうだな……いや、お前ならわずかな情報で機種を特定しかねん」

 店内の音声でバレないように、わざわざネットのプレイ動画をスピーカーにつないで大音量再生してるくらいですからね。

「あらまあ、それもそうですね。わたしも海さんたちに聞かないようにしましょう」

 わたしはアーケードゲームにはあまり縁のない方ですが、プレイ動画はちょくちょく見ますし、ヒット作品なら攻略法の知識もあります。

 家庭用ゲーム機に移植された作品もやってますし、おそらく所見でも、そこそこのスコアをかせげてしまうでしょう。

 ……極初期のテーブル筐体にあった正面向きのコントロールパネルだったらお手上げですが、おじぃがゲーセンを始めたのは八十年代に入ってからなので存在しないはず。

 そして素人さんの腕では努力しても2面の中盤が限界なので、わたしが負けるはずがありません。

 ちなみに脱衣麻雀や野球拳は勝負の機種対象外になってます。

「プロレスさん、隠し玉とかないですかね?」

 教科書とノートを広げながら質問します。

「レトロゲームをたしなむ部員はいなかったと思うそ?」

 いい勝負は期待できそうにありません。

「弾幕ゲーだったらいいなあ」

 そっち系統なら大抵のモノを移植版で散々やり込んだのでエンディングまで行けちゃいますよ?

「テーブル筐体にそんなものはない」

「しゅ~ん」

 90年代後半からですもんね弾幕系。

「せめて横シュー……いえ確かうちのレトロゲーには斜めシューなんてキワモノもあったはず……」

 しゃくれたお兄さんが廊下を走るゲームとか、トラックボール操作で核ミサイルを迎撃して爆発オチなゲームとか。

「あまり推測するな。ネタが割れると面白味が半減するぞ」

「でもレトロゲーってバリエーションが豊富で、楽しそうなのが多いんですよね」

 既存の作品にこだわらず、手探りで開発してる感じがこうばしいのがレトロゲーの魅力です。

 移植されてない作品も多いので、結構楽しみにしてるんですよね。

「では始めるぞ。宿題の範囲は?」

「実はもうやっちゃいました」

「では予習と復習を」

「やっちゃいました」

「ではナニをやると言うのだ?」

 ナニは殿方とお願いしますわたしは壁や天井になってガッツリ鑑賞しますから。

 あと真緒姉でも構いませんよ脳内補正でBL変換するだけです。

「イチャイチャしましょう」

 ごろごろにゃ~ん。

 改めてお兄にしがみついてゴロゴロします。

「みんなに麦茶とコーヒーれて来る」

「そんにゃ~!」

 お兄が無理矢理立ち上がったので転がり落ちましたゴロゴロ。

「少し遅いがおやつにするか」

「わーい♡」

 だからビキニ着れないんですよね。

「健司! 電子研がまたゲーム機を復旧させたぞ!」

 扉をガラリと開けて真緒姉が顔を出します。

「そうか! 機種はなんだ⁉」

「わからん!」

 レトロゲーって意味不明なの多いですからね。

「お兄、おやつは?」

 ナシならせめてゴロゴロさせてください!

「筐体が先だ!」

「んにゃ~~~~っ⁉」

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