第12話・みんなで作戦会議ですデュフフ
【
高等部2年C組・興行レスリング研究会会長【男子】
前世は魔王軍幹部、岩鉄元帥【♀】
岩のような外骨格を持つ
魔王に倒され心酔し、部族ごと支配下に入る。
いずれ勇者と対決し勝敗に関わらず命を落とす魔王のために、へなちょこ勇者を少しでも
先の戦いで実弟の
対決は十数回に
「うわー夢に出たのって、やっぱりプロレス部長さんの前世だったんだ……って
文芸部室でお弁当を食べながら裏サイトの転生者リストを調べていたら、とんでもない事実が発覚しました。
「あと勇者さんは聖剣とか新必殺技とか、ご都合主義にもほどがあります!」
その必殺技、どうせ聖剣とセットでゲットしただけですよね?
そんな
「これでは勇者さんとの再戦を望むのもし仕方ありませんね」
ムッキムキしながら『勝負! 勝負!』と叫んでいたプロレス部長さんの
きっとわたしが勇者さんよりマシに見えたからに違いありません。
……どんだけポンコツだったんですかわたしの前世。
「でも今回は岩鉄元帥部長さんが挑戦者な訳で……」
最近のゲームしか知らないとはいえ、わたしは熟練者。
対してプロレス一筋な部長さんはヌー……もといゲーム初心者。
わたし以外は敵味方問わず雑魚ばっかりとはいえ、勝ち抜き戦なので直接対決できるか心配です。
特に
下手すると先鋒に置かれて5人抜きしかねません。
「あとで腕前を確認しないといけませんね」
あまり他人と競わないタイプですが、ああいった子に限って冷静かつ自動的に
「
バトロワFPSで突撃死するタイプですよね。
あとは
お
「まゆみん、作戦はできとるかね?」
向かいの席でお弁当をパクつきながら
「そうですね……お兄が先鋒で、海さん、紫焔くん、小路ちゃんが副将で、わたしが大将……」
「そうじゃなくて、敵をスパイするとかゲームの練習するとかじゃよ」
理央さんはお食事中だけはセクハラしないので、いまは安全です。
食べたらすぐ逃げ出さないと。
「どうせ最後はわたしが勝つんですから作戦なんて必要ありませんよ」
「レトロゲームって操作が難しいんじゃろ?」
「それは相手も同じですから、ハンデのうちには入りません。むしろ勝負をどう盛り上げるか考えないといけませんね」
「自信マンマンじゃのう」
「最悪、わたしが5人抜きすれば済むお話ですから」
昔のゲームなんて、連射力さえあればどーにでもなります。
「そうそう、大会は裏サイトで生配信されるってよ」
「へー」
視聴数
……いえ、稼げるかどうかではなく、稼がないと。
「ゲーム動画配信者の血が騒ぎます」
「おや? まゆみん、そんなのやってたの?」
「オッサンのフリしてプレイ動画流すだけなので人気ありませんけどね」
再生数が1000超えした試しがありません。
「ゲーム動画は、ただ強いだけ、ただ無双するだけで再生数が上がるもんじゃありませんよ」
最低でもテロップくらいは入れないと。
中身もオッサンな理央さんに実況をお任せすれば、再生数登録者数共に爆上げ間違いなしですが、プレイ中で無防備なわたしがセクハラされるのがオチでしょう。
「で、実際お三方の腕前はどうなのよ?」
「どうなんですか?」
同じく文芸部室でお昼を食べている海さんたちに直接聞いてみました。
「課金は(あまり)してません」
やっぱり海さんはファンタジー系のソシャゲーマーでしたか。
あと( )の中身が聞こえてますよ。
「……三笠記念館を完全再現しました」
小路ちゃんはコツコツ作る系ですね納得です。
「あまりゲームとかは……」
ここで
「誰もアクションやんないの? それで勝てるのかねまゆみん?」
「素人はプロレス研も一緒です」
「まゆみんは基準がおかしい。ガチゲーマー以外はみんな
noobとはニュービー(初心者)を指すゲーム用語で、
「違うんですか?」
みなさん障害物もない草原や道路を特攻してヘッドショット喰らってくれますよ?
「初心者ほどわずかな練習で明暗が分かれるものじゃ。いまごろムキムキどもは部活さぼってゲームに
「まあレトロゲーは割と移植されてますし……でも、そんな簡単に強くなれるもんじゃありませんよ? せめて数年は……」
「素人は素人を倒せる力量があれば十分じゃ」
「なるほど……」
わたしの出番が少ない方が盛り上がりそうですしね。
「ところで先輩、プロレス研ってよく知らないんですけど、興行プロレスって言うからには興行してるんですよね?」
珍しく紫焔くんが発言しました。
「体育館でちょくちょく試合してますよ」
「リングはどうしてるんですか? 研究会にそんな予算あるんですか?」
「体育マットをリングにして、ロープは人力」
「人力?」
「ラグビー部さんたちの協力で、周囲をマッチョで囲んで腕ロープするんですよ」
「スクラムでロープの代わりをするんですか?」
「ほぼラリアットですね。たまに正面から喰らってKO負けする選手もいます」
人力ロープはラグビー部だけあって、本物のロープを
「あと試合前の
わたしは一度しか見た事ないので
プロレスラーさんはイケメンさんなほど
「そうそう、さっき裏サイトにルールが提示されとったぞ。ゲームの種類は、まゆみんだけ当日まで非公開らしいぞい」
理央さんはお弁当を食べ終わった様子。
そろそろ小路ちゃんを連れて逃げ出さないと……理央さんのお隣は海さんなので
「わたしだけ? まあハンデとしては十分ですが……」
「わかり次第報告します!」
「海さんやめてください面白くないですよそれ」
あと真緒姉にバレて殺されます。
「あと実機での練習は今日の放課後から、4時から5時までが勇者チーム、それから6時までが幹部連らしいぞい」
「では、みなさん放課後……わたしのリヤカー引くお仕事のついでに練習を。移植されてるゲームなら、各自ダウンロードしてください。たぶんテーブル
「テーブル筐体ってなんですか?」
紫焔くんが右手を上げて、可愛らしく首をかしげました。
「そこからですか⁉」
道のりは遠そうです。
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