第143話 ベスの兄妹と

 村から帰ると、ポンコツが埃をとるブラッシング、最初は俺からみーちゃんへ、ここら辺は食事と変わらない。


 ササッと軽く埃を取って貰ったら、浴槽でタライに魔法でぬるま湯を張る、これは俺の仕事、四本の足をパシャパシャして汚れを取る、タオルを敷くとみーちゃんの足洗の番。


 俺がタオルでテシテシ拭くと、次はみー……みたいな、流れ作業があるのだ、これは前の世界でもやっていたが、基本外の生活だったから、ここまではしてなかった。


 サッパリして、姉妹が綺麗になるのを待つ、ちなみに洗う時だけはぴーちゃんは最後、小さすぎてタライで溺れるから、ポンコツがササッと鳥足を洗うのだ、まぁ仕方ないのも本人承諾、乾いていても何となく皆で全身フルフルさせちゃうのは本能ですかな?


 そして皆でベッドにダイブーぽわんぽわんーしてキャキャする、ぴーちゃんは酔うからダイブしないのだ、揺れが収まった頃にピョーンと乗ってくる、それだけ跳躍あるのに、未だに頭に乗るときは鼻踏んで乗ってくる……


 今日は村の雰囲気どうだった?物足りないけど感じは良いよね?


「ンミー」まったりできるのー


「ピ」はやくほうせき、とりたい


「きゅい」おんせんもあるでよ


 ハッ!そうだった……温泉が近くにあるんだった!不覚ぅ!


「ミィ?」おんせんてなぁに?


 温かいお湯が常に湧いてて気持ちいいんだよ?体の不調を直す効果もあるかも?


「ミゥー」かぜのとき、おんせん、いけば、よかったのー


 風邪の時はお風呂駄目なんだよー?


「ミッ?」そうなの?ものしりっ


 ふふふ、にぃには天才!


「ピーィ」ほうせきーいっぱいー


「きゅる」なにがとれるか、わかんないよ?


「ピッ」なんでもいいっ


 餓えてるヒヨコが餓えている!


 

 足跡が聞こえるよ、宰相だーポンコツ出て。


「あいあいさー」


 がチャリと扉を開けるとメイドさんと一緒にワゴンを持って来る、こういうトコは貴族ぽい、てか誰が金物作ってんのか謎…


「夕飯にはまだ早いですから、お菓子どうですか?ミルクも有りますよ。」


 おおーミルクなのー!


 飛び付いてペロペロ飲む、姉妹はお菓子に興味を惹かれている、ここのお菓子食べたこと無いな?どんなのだろ?


 ミルクを一旦置いといて、床に絨毯を敷いて置いてくれる、出来るメガネだぜ、ってメガネいつするの?ずっと外してるし……


「ポチ殿が居るときはしません、高いんで!」


 あーい、お菓子ーお菓子ー


「ミ?」ふぁふぁしてるの?


「ピッ」……んぐ、なかなかイケルっ


「きゅい」きほんどうぶつだからー


 そーだよね、二足とは言え動物だった、俺達でも普通に食べれる、何だろう?蒸しパンみたいな感じ?ほわほわ食べる、うむ良いね。


「ありがとう御座います、シェフは中々腕の立つ方なんですよ。」


 ほむほむ、ムシャムシャ……ペロペロ……ミルクとの相性抜群!


「ンミー」みぃもーまねするのー


「ピーィ」あいしょう、おくがふかい


 本気で料理研究家になんのかな?そーちゃんは食べないの?


「きゅる!」くうふくの、ゆうはんが、いちばん、うまい!


 成る程そういう派か、食べ過ぎないようにしないと、夕飯入らないからねー。


「ミゥ」どっちもたべるの


 何時から大食いになったの……



 おやつを食べて膨れた腹を消化するために……寝る!ぐーたらの本気よ!


「ピー」おにぃは、のらに、むいてない


 何か俺もそう思った、人間の名残が堕落を楽しんでいるのだよ。


「きゅる」という、いいわけをしているもよう


 ネタぶっ混んでないで寝るのよー……


「一緒に寝ますぅー!」



 


 むぅ?……むーもう夕飯か……眠い…


 コンコン、コンコン、コンコン。


「ミゥ?」にぃにー?


 んむー起きるよー……クァーッとあくびをして起き上がる、ぴーちゃん、そーちゃん、夕飯だよー……


「ピー」おなかいっぱいー


「きゅる」すいたーおきる


 んむんむ、クシクシ顔をみーちゃんと洗う、宰相じゃないのかな、開けないぞ?


 ポンコツぅー扉あけれ。


「あいあい、さー……」


 ノロノロ動いて扉を開けるポンコツが止まる、ん?どしたんー


「まだ夢見てるんですかねー?」


 何いってんだよ、夢遊病かっての。


「ベスさんが居る……」


 …………んわんだとぅっ!?


 扉に駆け寄る、扉の外を見るとベスが!……って……ちゃうやんけ。


「はぇ?違いましたー?」


「あ、あの、夕飯の準備が出来ました。」


 おうーサンキュー弟君。


「ミ?」へんたいじゃないの?


「ピ?」なにがあった……


「きゅる」せいちょうしたね


 何だよ……お前ちょっと見ない間にベスに似ちゃって……可哀想に……。


「に、似てないと思います……」


 現実逃避は良くないぞ、兄弟だ仕方ないわ。


「でも性格は真逆ですから…顔だけです。」


 致命的……


「ピー」おとうと、へんたい?


 凄くまともな子ですー、何でお披露目前にネタばらししたのよ?


「それが……その……言いづらいんですけど、お兄さまが逃げたんです……」


「ンミッ!?」にげた!?


「ピーッ!」げんかいたいせい!


「きゅる」でもたんち、ひっかからないよ?


 確かにーベスの気配が見えない、城の周囲には居ないと思うよ?


「本当ですか?……良かったですー」


 まぁ神出鬼没だから分かんない。


「そうですよね、将軍も探し回ってます。」


「きゅる」どうやってにげたのかな


「それが分からないんですよね。」


 俺は薄々分かってるよ、王城だもんよ、隠し通路があるんだろう、城ってのはそういう仕組みなんだよ、王位継承なら知ってるはず。


「そんなのが有ったなんて……」


 まぁいいわ、探知フル稼働で、夕飯にお呼ばれしようか?


「ミッ」だいじょうぶ?にぃにー


 守るから大丈夫!


「ピー」たんちが、うらぎる、よかん


 止めてよ、自我持ってる魔法はこんなときに発揮するんじゃありません!


「きゅるー?」はやくいこう?おなかすいた


 せやな、はよベッドがら降りなさい、お呼ばれなんだから、遅刻はイカン。


「ミィー……」らんにゅう、じけん、はっけん?ほかく?どれもいやー……


 大丈夫だよ、何か警備係が外を大人数で探してるみたいだから。


「きゅい」にぃにはやくー


 はいはい、行きましょうか。



 食堂まで弟君に案内、すいませんね。


「いえいえ、此方こそ、ご迷惑をお掛けして」


 ほんまやで?


「ピ!」ま、まとも!


「ミィー」ちゃんとしてるのー


 そうだろ?ベスが異常なんだよ、何でああなるのか不思議だね、猫族の神秘だね?


「お兄様だけですから……」


 食堂に着くと、王妃と王様と宰相が居る、きっちり正装している、堅苦しい……


「ごねんなさいね、きゅーちゃんさん、王族はこれだから面倒なのよ、宰相が五月蝿いのよ?お客様の前では正装はしなさいってね?」


 メガネなくても攻撃したろか?


「や、止めて下さい、死にますアレは。」


 手加減するから、安心して?


「武道派ではないんです……」


 宰相って何で武道派が居ないのか、何故ならそんな奴はぁ脳筋だからだよ?


「ミィ!」べんきょうになるの!


「さぁ、お座り下さい、高さの調節もしてますから、ヒヨコさんはテーブルに乗って構いません、流石に無かったので。」


「ピィ」できるおとこ


 そそくさと椅子に飛び乗る、お座りしてもテーブルが見える高さだ、これわざわざ作ったの?申し訳ないですぅー!


「ふふ、いいのよ、職人も暇なの」


 百人程度の村なら早々仕事が無いのか。


「ピー」ぽんこつ、てーぶるにのせろ


「あいさー!」


 ぴーちゃんもテーブルに乗って準備完了、そろそろ兄妹紹介しない?


「うむ、そうだな、来なさい二人とも。」


「はい、父上。」


 妹は影に隠れてた模様、モジモジしながらテトテト出てきた、可愛いね?妹はそこまで変わってないねー。


「ピー!」にそくのねぇね!かわいい!


「ミー?」みぃもたつの?


 スクっと立って猫座り、可愛いね!


「あらあら、本当に可愛いわ!良いわねー可愛い兄妹ばかりで……」


 心中お察ししますー。


「うむ、羨ましい程可愛い子達だな、さて、改めて客人に紹介しなさい。」



「はい、次男のユッタ=ベゴーニャ一です五十一歳になりました。」


 一歳でそんなにベスに近くなるの?


「猫族は五十を越えてから成長するのだよ、我々も不思議なのだがね。」


「はじゅめまして、長女のロレンテ=ベゴーニャ一れす、二十一歳になりましゅた、よろしひゅくおねがいちます。」


 うん、成る程五十に満たないから変わらないのね、相変わらず可愛いね?


「ありがとごじゃいましゅ……」


 テレテレしている、みーちゃんも何故かテレテレしている、シンクロでダブル可愛い!


「ふふふ、良いわね、さぁ二人ともお席に次いで食事に、しましょう?」


「はい、母上。」


「ミァー」みぃのいもうとにしたいの


 こらこら、それは駄目ですよ?


「ミィー」わかってるの、かぞくはいっしょなのー


 せやねぇー…家族は皆ここに居るからね?


「ンミっ」そうなの、みんなかぞくなのっ


 お願いポーズでテレテレとか滾るぁ!


「ピーッ」いっしょうかぞくーっ


 ヒヨコも滾った、ダブル子猫に。


「きゅーちゃんさんが居ると本当に賑やかになって私も嬉しいわ、何時までも居ていいのよ?お願いね?」


 いやーそれほどでもー!アルよね!


「きゅる」じがじさん、かっこわるい


 (悪くない)俺は可愛いのだ。


 夕食には例のお菓子を作ったシェフらしい、彩りといい、香りといい、出来る猫族さん!


「もう八百歳になるのよ?まだまだ元気なのよ、それだけ歳を重ねた結果ですわね?」


 八百歳!すげー猫族は一世紀寿命だっけ?俺たちとそう変わらないから、何だか将来のやりたい事の夢がひろまくりんぐ!


「ピー!」ほうせきおうになる!


 それはそれで良いけどさ……


 食事は繊細で丁寧で大変美味しゅう御座いました、何時もこんな美味しいの食べてるの?


「そうね?シェフが変わったらどうしましょう?弟子は育ててる様ですけどね?」


 うむ、後継は大事だよね!ベスは何でも食べるけど、野生は違いますなー。


「それを考えるとベスを見習うべき点も有るのかも知れませんね?」


「何を言うのだ王妃よ、ベサーレスを見習うなんぞ野生に戻ると同じではないか?」


「あら、でもご先祖様は野生から始まって今に至るのよ?何時未来が崩壊してもおかしくないのは想定すべき事ですわよね?きゅーちゃんさん?そう思いませんこと?」


 んまあ未来なんて何時変わるか住んでる星の生き物次第でしょ、考えても良いと思うね。


「ぽ、ポチ殿まで……いや、星を渡り歩いているポチ殿だから言えるのか……。」


 渡り歩いてなくても想像は誰でもすると思うよ?宇宙に興味をある人とかね?


「そうなのね、本当に賢くて大変宜しいですわ、貴方にも見習って欲しいわね、王様?」


「むむっ!!板挟みっ!能天気なベサーレスが希に羨ましくなる……」


 アレは駄目だろ。


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