第118話 カッコだけは付けたい猫

「にゃー!助けるにゃー!ポチ!」


 まだ引き付けろ!やれば出来る!


「そこからでも倒せるのにゃ!?ずるいにゃ!早く倒すにゃ!」


 つーかてめぇで殺ろうと思わないのか!立派な狩人になって村に帰るんだろっ


「にゃにゃっそうにゃ!や、殺るにゃ!」


 猪に追いかけられてたベスが向き合う、あいつの武器は剣だ、狩人なのに弓じゃないとか?


「くっ来るにゃ!成敗してくれるにゃー!」


「ブモーッ!!」


 突進する猪を紙一重で交わす、猪はそのまま走って崖に落ちる…………何してんの?


「ふぅー熱い戦いだったにゃ!崖に落ちたにゃー作戦通りにゃっ」


 てめぇも崖に落としたろか?餌なのに!


「にゃ!そうだったにゃ……」


 崖の下を見る、濁流だ……もう助からない、そして餌もない!


「にゃ……次探すにゃっ」


 次崖落とし作戦したらお前が崖な?


「殺生にゃー!」


 猫だってなー食おうと思えば食える!


「ポチは残酷にゃ可愛い猫をたべるにゃ!」


 不味そうだからくわないよ?


「どっちなんにゃーっ」


 チッ雨季が過ぎて餌が減ってるのに、二足の猫が使えないぜ、あの猫なら余裕なのにー……あの猫?どの猫?ふむ、記憶の中の猫は立派な猫の様だ、鍛えねば!


 五メートルの熊が居るぞ!次あれな?


「にゃ!?大物過ぎにゃっ」


 ナマ言ってんな!男なら殺ってみな!


「にゃうー!お、男ならや、やるのにゃ」


「グオオオオォオ!」


「にゃー!?やっぱ駄目にゃー!」


 ピューンと走り去る、逃げ足だけは早くなったよね、それも訓練の賜物か……


「グオオオオッ」


 標的を俺に変えた様だ、仕方ねぇ餌も減ってるしな、脳天サンダー!


 デカイ熊がアバババハって痙攣する、が耐えた、おおーやるじゃないの?


「グルゥウグオオォゥ!」


 ふらふらしながら近づいてくる、そんなんじゃ余裕だぜ?


「必殺技ベサーレスの舞にゃー!!」


 


 分かってたけどね……来てたのは、人の獲物を弱ってから横取りだよ!


 ベスが剣で首を切る、斜めった、ミスったなー血がベスにもろかかる。


「ぎにゃー!血がー!目がー、にゃー!」


 今の最後無理矢理にゃ付けたな。


 熊がドスーンと倒れる、さっと空間庫に閉まって、ベスの元に、ゴロゴロ暴れてるのを結界で閉じ込める、中に水を入れて洗う。


「ブベベベブエッー!ニャーブエッ!」


 洗濯機の要領でクルクル水を回転、ドラム式洗濯機みたいな状態でベスと水が回転、少し綺麗になったら鼻先だけ結界で空気が吸えるようにする、でも汚れ落ちてないから回転。


 初めてじゃないので口を開けないで鼻呼吸必死、ゴロゴロ回転石鹸の花も混ぜてアワアワー、粗方とれた所で排水、そして濯ぎ、のち乾燥ー、見てるだけでいいって楽だわー。


 毛がフサフサになった所で回転終了、洗濯完了!満足の出来っ


「おぇぇぇぇー、い、いつもながら酷いにゃ……おぇっぷ」


 勉強しないお前が悪いわ!何カッコツけてんだよ!だから失敗するんだよ!


「うう……騎士の名折れ……にゃ」


 狩人だろ。


 全く手の掛かる猫だよ!ふわっと浮いてベスを爪に引っ掻けて持ち上げる、空を飛びながら考える、空飛ぶ犬はカッコイイ!!


「ううー高いにゃー怖いにゃー……」


 猫様は高い所好きだろ?降りられないけど、二足になると違うの?


「関係ないにゃー高いのが苦手なだけにゃ!」


 ベスは俺より重いので少しフラフラしながら住みかの洞窟にたどり着く、おら寝てろ、熊の処理してくるわー。


「おかんだにゃー……」



「ングング美味しいにゃ、ポチは優秀な犬だにゃ、ハグハグんまっんまっ!」


 にゃ、わすれてんぞ?


「にゃーはまだ村に帰れないかにゃ?」


 帰れると思ってる方が不思議だよ!鍛える為に追い出されたんだよ?どこが成長したんだよ?逃げ足ですか?


「んにゃーそれだけじゃ駄目かにゃ?」


 そこまで言うなら帰ってみればいいのに、そんなに親父さん怖いの?


「こ、怖いにゃ……罰があるにゃ!」


 ほうほう、ちなみにどんな?


「ポチに言うと危険にゃ……」


 お望み通り危険な罰与えてもいいんだけど?


「にゃにゃっ父上より危険な匂いにゃ!」


 心外!侵害です!心の侵害!


「父上の罰は……、にゃ」


 無理すんなよ……


「マタタビ一月禁止なにゃ!!」


 へーソウナンダ。


「にゃにー!?反応が薄いにゃりぃ!」


 おいーキャラブレてんぞ。


「酷いのにゃ!猫にマタタビ禁止なんて酷いにゃ!父上の罰は厳しいにゃ!」


 マタタビなんて人間からしたらヤクみてーなもんだろ?禁止しちまえよ?


「にゃに……一生?禁止にゃ?耐えられないにゃー!」


 やっちまったな……立派なヤク中だよ!


「なんにゃ?人間もあるならどんなに辛いか分かるはずにゃ?」

 

 え?人間のヤクはほら、廃人仕様だから、早々やる奴いねーぞ?


「にゃ……人間は恐ろしいのにゃ……」


 そーだよ人間様はな醜いの一言で終われる。


 つーか、此処にマタタビなんて無いだろ?何ヵ月此処に居るの?ベスは。


「んーざっと百五十年にゃ?」


 ……百五十年マタタビ使ってないのに、何で一月の禁止が辛い罰なんだよ!!


「ハッ!そうにゃ!みゃーは百五十年も我満してるのにゃ!?天才にゃ!?」


 もう村に帰れよ……


「そ、そうだにゃ一度位は帰ってみるかにゃ?所でポチはどうするんにゃ?帰る場所はないのにゃ?」


 そーだな、俺は此処が帰る場所でいいわー


「にゃー……会いたい人居ないのにゃ?」


 居ないなー今の所は?


「良い事思い付いたにゃ、ポチも村に来るといいにゃ!ポチに故郷見せたいにゃ。」


 ほう……二足の猫の集団か……滾る!


「な、なんにゃ……怖いにゃ!」


 気にすんなってー動物が好きなだけー。


「ほ、本当にゃ?捕まえて奴隷とかないにゃ?食べないにゃ?」


 そんなにお望みならしてやろうかあん?


「望んでないにゃー!嘘にゃし!」


 なら土産でも持って行きますか、何が好きなのよ?二足の集団は?


「変な呼び方するにゃ!にゃーの一族はベゴーニャってちゃんと付いてるにゃ!」


 へえ?だから語尾がにゃに無理してんの?


「違うにゃ趣味にゃ!」


 へぇー……趣味なんだ、作ってんだ。


「ちっ違うにゃよ!今のはミスにゃ!」


 で?ベゴーニャ一族さんは何が好物なのよ?マタタビ以外で?


「にゃーそうにゃね、熊の手は好物にゃ?」


 そうなんか、なら明日から熊狩りじゃー!


「にゃー!しまったにゃ!」




 熊さんー熊さんー何処に居ますか?探知に引っ掛からない、ぬ?何故?


「クンクン……にゃんか森がオカシイにゃ?動物が少ないにゃ?」


 んー……そうだな、熊以外探知してもあんまり居ないな?どうしたんだろー?


「これは……前触れにゃ?」


 何の?なんかオチがあるの?


「前触れのオチってなんにゃ……」


 しらねーよ!


「にゃー!もう!にゃんにゃんにゃ!」


 こっちが何なんだ、だよ!にゃ大杉!


「何か大きな反応がないかにゃ?何かの強い生き物が居ると逃げるのにゃ。」


 強い反応が?…………あ、あった。


「どどど何処にゃ!?怖いにゃ!」


 森の奥、ここから歩いて三十分位?


「にゃ?近いにゃ、逃げるにゃよ?」


 なんで?熊見つけてないじゃん、お土産もたないとか、どこぞの非常識とも思われたくない


「今が非常事態にゃ!熊なんてどうでもいいにゃ!早く村に行くにゃ!」


 えー?これも修行だよ、でけーお土産持って帰ったらパパ上大興奮だよ!


「……にゃ、そ、それもあるかもにゃ」


 じゃー行こうーでっかいお土産持って。


「にゃんか乗せられてる気がするにゃ?」


 森の中を進むとネズミ一匹も居ないなー、反応はでかいけど、何だろう?敵って感じがしないんだよな?


「にゃにそれ?敵にゃの?味方にゃの?」


 分かんないー行ってみるしかないし。


「敵じゃないなら良いにゃ……」


 自然とか神様が言ってたけど、二足の猫がいる時点で自然とは?とか考える、地球の自然とは意味が違う様だ。


「ん?何かの匂いがするにゃ?」


 そろそろ見えても良いはず、なのに違和感のある匂いだけで姿が見えない。


「ポチの探知も失敗するのにゃ?」


 ポンコツとは違うのだよ!……ポンコツ?って誰だろう?言い慣れてる感じ。


「にっ!?」


 素早く交わすベス、何かの魔法?使ったみたいだ、魔法使えるのが居るのかー


「なんにゃ!見えない攻撃にゃよ!?」


 そうだな、でも覚えがある、カマイタチみたいなもんだ、空気で切り裂く感じの。


「空気で切るにゃ?無理にゃよ?」


 出来ますよ?ほら、カマイタチー!


 前方の草むらがザッと切れる。


「にゃ!ポチ凄いにゃ!」




「きゅい!きゅい!」なかま?なかま?


 何て?ベスさんよ?


「にゃにかの鳴き声にゃ……何処にゃ?」


 大きな木の狭間からガサガサ音がする、警戒はしてるけど、まだ敵意がない。


「こ、怖いにゃ……帰るのにゃよ?」


 まあ待て「きゃん!」誰か居ませんか?


「きゅい!」いるよ!


 バッと森から飛び出たのは、可愛い子、額に綺麗な青い宝石?白い毛並み、そして、鑑定では、カーバンクルと出ている、うん、知ってる知ってるー……ネズミだっけ?りす?


「な、なんにゃ!?この生き物はにゃ?」


「きゅいー?」なかまだよ?


 仲間って誰……?猫か?


 と、ツツツと近づいてくる、大きい気配はこの子だ、だけどやっぱり敵意がない、ピョンと俺の背中に乗って頭に手をかけて、俺の目を覗き込むと。


「きゅい!」やっぱり!なかま!


 いや、知りませんけど誰ですか?


「にゃ?ポチの知り合いにゃ?」


 フルフル、いやいや、お初だよ?



(あらあまあ、異変が出てきたわね……まだ大丈夫かしら?)


 あらおらうふふの神様出てきたよ、異変って明らかにこの子だよね、動物じゃないもんね?


 ちょっと神様と喋るから待ってろ、大きい気配はこの子だけど、敵意はないから。


「にゃに突然言うにゃ?頭可笑しくなったにゃ?神様否定してた癖に、にゃ」


 黙れ、駄目猫が!崖から落とすぞ!


「にゃー!?怖いにゃ……」


(ふふ、そうやって調教するのね?上手だわ)


 嫌な言い方しないでくれます?


(そうね、突然変異とでも言うべきかしら?前に言ったわね、あなたは此処に居てはいけないと、やはり時空の歪みが生じたのね、そしてそれはあなたと言う存在に……巻き込まれた?近づいた?何て言えばいいのかしらね?私もこういった事はあまり経験ないのよ、とにかく、あなたを仲間と思うのは、その子があなたの欠片が混じったせいね、カーバンクルは通常は赤い宝石なのよ?でもその子は目も宝石も青いでしょう?気配がね、あなたに似てるの、だから仲間だと思ってるのよ?)


 あー……なんだっけ、俺が神に近い存在で本当は別の世界に居たんだって?……あ、時空の歪みって俺がここに居るから?なんか宇宙レベルで何か起きるとか言ってたね?


(そうよ、それです、でも今回はまだ大丈夫そうね、カーバンクルも魔獣だけれど、あなたの欠片が入って神聖な生き物になってるもの)


 げぇー!本当だったの!居たらいけない存在がここに居るのかっマジ宇宙レベルじゃん!


(ふふふ、きっともっと大事になるけれど、まだ大丈夫じゃないかしら?あんまり気にしないでその子はお仲間にしてあげなさい、あなたの眷属みたいだから。)


 そ、そう言われても……どうしよう。

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