第117話 初代が居た世界
翌朝は雨だった、丁度雨季の時期なのだそうで、毛が湿気るから大体家から出ないそうな?食料どうすんの?
「肉を干すのにゃ、それを食べるにゃ。」
ほう、俺が結構な数狩ってるから干し肉には困らないけど、飽きるなー雨季ってどれくらい続くの?
「大体一月にゃよ?森の動物も大人しくなるにゃー良かったにゃ。」
せめて訓練すれば?ぐーたらしてないで?
「にゃーやりたいときにやるのにゃ!」
全く猫ってのは、やる気ないねぇー
「そうにゃー猫だから仕方ないにゃ」
そうやって言い訳して!お母さん分かってるのよ!訓練したくないだけでしょ!?
「にゃにゃ!バレバレにゃ!」
後何百年経ったらベスは村に帰れるの?
「時を待つにゃ」
カッコいい風に言っても駄目猫なのは変わんないからね?
「にゃー寝るのにゃ!……すやぁ」
はぁー俺の知ってる猫はもっと、もっと……やる気のある……何だっけ?駄目ねー年かしら?すぐ忘れちゃう。
……あー思い出したくないのかな?
……
…………
………………
「お父様にご相談がありますの。」
「ん?珍しいね、しっかりした君が相談なんて?なんだい?」
「はい、実は何者かの加護を受けてる愛し子らしき子が私の世界に着いてしまったのです、送り返そうにも、ステータスが見えないんですの、困った迷子ちゃんで、どうしましょう?」
「神の君がステータスを見れない?おかしな話だね?隠蔽してても神には通用しないはずなんだけどねぇ。」
「ええ、本当に不思議な子で、見てる分には面白い子なんですのよ、ふふ。」
「そうか、しかし元の神の元に戻さなければ宇宙のバランスがおかしくなってしまうからね…………?こんな話前にもした様に感じるね……誰だったかな?」
「まぁいやだ、お父様ってば痴呆ですか?無理してはいけませんわ?」
「酷いね……痴呆ではないよ、相談が多くて中々引き出しが見つからないだけだよ?」
「そうですか?なら良いの、うふふ」
「……君は変わらないね、そういう所、その迷い子の名前も分からないのかい?」
「辛うじて見えましたわ、きゅーちゃん、と言うらしいんですが、何か強いショックでもあったのか記憶が封印されてますの、今はポチという名前で生活してますのよ?」
「ん?んん?……あるね、聞き覚えあるね?……確かミネルバ君だったかな?」
「あら?そうなんですの?私の最初の世界のマニュアルを無視した子でしたっけ?」
「え?…そ、そうかな、怒ってるのかい?」
「あらいやだ、ふふ、怒ってなんてうふふ?」
「んっ!そう言えば探してる様な噂は聞いたかな?また何かしたのかと思ったんだけどね、君の世界に居るなら知らせた方がいいね?」
「ああ、お待ち下さい、私が時期を見てお話しますから、お父様は手出ししないで?」
「そ、そうかい?なら任せるよ?」
「ええ、ええ…ふふ、そうですか、では。」
「……大丈夫かな?」
ザーッと雨が降る、住んでる洞窟が湿っぽい、確かにこれで濡れたら最悪だなー。
ボーッと雨を見る、誰かが泣いてるみたいだ、何が泣いてるのか分からないけど。
(大切な誰かが泣いてるのかもしれませんね?)
!?
誰だ?脳内に声が聞こえる……ぽ、ポルターガイストっ!?
(ふふふ、本当に面白い子、そして困った迷子の子、あなたの事、私は知ってるのよ?)
……やだ幽霊!ちょ俺チキンだから!犬だけどチキンなの!やめてっ!?
(もう、神様の存在まで忘れてしまうなんて、いけない子ですね?)
ええ?居たの?何でチートくれる時居なかったの?テンプレ台無し!
(ふふっ、だってそのチート?は私があげたものでは無いもの?)
えぇ?どういう事?
(そうですね、別の神様があなたにあげたのよ?覚えてないかしら?)
……全然覚えてない、何で会ってないの?
(その前に、聞きたい事があります、あなた記憶取り戻したいですか?)
ぬ?やっぱり何か忘れてるんだ?うーん…………そうだなぁ、特に思い出したいとは思ってないかな?
(あら、全くのゼロな状態でも、ここで生活したいのかしら?)
うん、何か気分が良い?ここは何か落ち着くんだよね、野生の名残かなー?
(過去に残した大事な何か、思い出せない何か、知りたくありませんの?)
過去の?……何かしってんの?
(いいえ、あなたが面白いので観察してました、何か思い出がある様子で、気になったのよ?大事なものを思い出したくないのは何故かしら?ってね、ふふ)
あらあらうふふ、ですかっ!?思ってたのと違って怖っ!って何故って言われたらさー思い出せないっていうより思い出したくない感じがするんだよ、だからそういうのは思い出さない方がいいんだよ。
(そうなの、余計なお世話でしたね、でも困ってしまうの、あなたが此処に居るとね?)
えー!神様が追い出そうとしてる!俺をここに送り込んだ癖にっ
(ふふ、それも違うのよね?私一切あなたと関係ないのよ?)
……そ、そうなの?何だか分からなくなってきた!けど何で追い出したいの?
(追い出したいなんて人聞きが悪いわ?困る事があると言ってるのよ?)
あ、はい、何かすいません。
(そうね、何処まで話していいか分からないのよ、でもね、あなたが神に限りなく近い所に居て、そんなあなたが違う世界に渡ってしまうと宇宙が大混乱、という事かしら?ふふふ)
異世界ファンタジーかと思ったらSFでした?ってオチですか……
(また面白い事言うわね、個人的には見ていたいの、ここの世界は自然のまま育てているから、見る分にはつまらなくて、つい愚かな人間でも造ってしまおうかしら、なんて思ってしまうの、駄目ね?)
駄目なのは思想かなって思います。
(あらあらそうかしら、ふふ)
俺、神に近いの?だからチートなの?そのチートくれた神様は別に居て、俺がここに居ると宇宙がパニックで……俺ってここに自分で来たの?今まで違う世界に居たの?
(そうね、そうよ?)
人間の世界じゃなく異世界はここが初だと思ってた、だからなの?何か忘れてるって思うのは、その異世界で思い出があって、でも思い出したくないんだ、俺、多分、そう、俺……いじめられっ子だったんだ。
(うふふっ面白いわー手放したくないわね?宇宙が崩壊寸前まで黙っていようかしら?)
コワッ!でもでも戻りたくないんだ……
(いいですよ?此処でゆっくり養生しなさい、あなたは心が疲れているのよ、だからね?この大自然で癒しなさい、神の私が、モナストイルスキーが許可致します。)
モナさんでいいですか?長いのは良くないよ?人の記憶領域にも限界があるからね?
(うふふ、そうね?それでいいわ、初めてよばれたわ斬新で何故か嬉しいものね)
「うにゃー?またボーッとしてるにゃ?」
ベスが起きたわ、ご飯の準備しないと
(何か困れば相談なさい、でも今は忘れた方がいいわね?では。)
怖い方のあらあらうふふが去った、神様にロマンなんか求めるべきじゃない!
「どうしたにゃ?」
何でもないよ、神なんて信じるもんじゃないねー犬が神に近いとかオカシイ。
「お腹すいたにゃーポチ様にゃー」
へいへい、今用意するから待ちなさい!
「待つにゃ」
その頃のヨンセンの世界では。
「……何で?何で戻らないの?きゅーちゃんいなくなっちゃったの?うえーん!」
「店長営業中です、お静かに。」
「お静かに!?きゅーちゃんが居なくなってもう一年だよ!?探さないと!探してるけど!何で?きゅーちゃんの事忘れるつもり?」
「……そんな事一言も言ってませんけど?」
「に、睨まないでよ!姉妹があんなんだし!もうー!どうしたらきゅーちゃん帰ってくるの!寂しいぃー!」
「チッ解放時間も人が減って売り上げに響いてるのに何処に居るのか?戻ったらお仕置きですよ、当たり前でしょう、損失は本人が背負うべきです、そう思いますよね、店長?」
「ひぇっ戻ったら嬉しいけど恐ろしい!」
((ボスの話してるーボスー何処にいるんですかー?帰って欲しいですー!))
「ンミッ!!」たるんでるの!くんれんするの!いいこにしてれば、かえってくるの!
「ピーッ!」いいこになる!いいこになる!
(何でこんなカオスになったし……)
「前からきゅーちゃんが言ってたんですよー、いい子にしてれば良い事があるって……」
(てか、まだ探せないの?どんだけ遠くに行ったんだよ!宇宙の危機だよっ)
「人間になったから精度が落ちてます……気配隠してたらお手上げですぅ」
(もー!お父様も教えてくれないし、何なの?何で教えてくれないのっ!キィィィっ!)
「でも姉妹が泣いてるよりはいいと思います」
(分かるけど、何でみーちゃんはスパルタになったの?可愛さの訓練とか!)
「……さぁ?きゅーちゃんが可愛さを追及すれば良い事があるって……」
(それで誤魔化してたからあーなったんだ)
「みーちゃんはピュア百パーセントって言ってたので、丸飲みで覚えたんですねー?」
(タ、タチ悪いわ!)
(随分お困りの様子ですね?)
(!?……誰、あたしの世界に勝手に入らないでよ!放り出すわよ!)
「……?何か聞き覚えあるような?」
(前にお会いしましたね、ミネルバさん?)
(ちょっと!無視すんな!誰だよ!)
「声だけだとちょっと……忘れました?」
(私ミネルバさんの管理していたヴィデーンの初代神です。)
(え?)
「あっ!初代さん!?ですかっ」
(ちょお待ち、何、初代が何の用で勝手に人様の世界に入ってきた訳?言い分によっては容赦しないよ?)
(あらあらふふ、いいのかしら?追い出して?私が止めてるの、お父様には。)
(!?って事は……あんた犬の事知ってる?)
「ほっ本当に!?何処に居るんですか?」
(教えません、今は。……可哀想に此処で何があったのか知りませんが、今は記憶がないんですよ、ここで過ごした記憶も)
「はぇ?な、何で記憶が?え?」
(あんた、操作したんじゃないだろうね?)
(あらあら、それはお父様に叱られますわ、私の世界に来た時には既に記憶喪失でしたもの、一応聞いたのよ?戻りたくないのかと、お返事は今は何も思い出したくないんですって?)
(……マジか、でも宇宙が)
(ええ、そうね、早く返さないと、とは思いました、けれど心の傷が深いので暫くは私の世界で休ませますの、仲良しのお友達も居ますしね?心配いりせんよ?元気にしてます。)
「心に……傷が……わ、私なら癒せるかもしれません!教えてください!」
(いいえ、駄目です、いいですね?心の傷が癒えるまで放って置いてくださいね?)
(あんた、宇宙を混乱させるつもり?)
(あらいやだ、ギリギリまで待ちますわ、そういう事でお知らせだけはしておこうと思ったのよ、此処で何があったかは知りませんが、心の傷は深いです、愛し子にそんな傷を負わせるなんて私怒っていますのよ?では。)
「まっ!待って下さい!私っわたし……神様なのに無力です……」
(……土足で踏み入れてさっさと帰るとか、何かタチ悪いわー!むかつく!)
「先輩……私きゅーちゃんの神様なのに失格です、辞めた方がいいですか……」
(バカ、辞めるな、辞めれば犬は解放されるけど、直ぐに死んじゃうでしょ、只の犬になるんだから、しっかりしな!)
「だって……」
(それに、初代も案外良いやつかもね、ヒントくれたし?)
「ヒント……?どんな?」
(まず、初代の世界に居るという事が分かった、記憶喪失で心の傷が深いから静観する、後は元気にしてる、って事。)
「お、お迎えは駄目ですか?」
(正直宇宙の為には早急にって思うけど、犬が記憶喪失になるほど深い傷があるって考えると早計かもね、静観に一票。)
「そんな……何時になったら治るんですか?何年ですか?何百年ですか?」
(さぁね、中身人間だから、早くはないだろうね、しょうがない……って訳、聞いてたでしょ?みーちゃんもヒヨコも、犬はまだ心の病気なの、元気になるまで待ってな?)
「あ、みーちゃん、ぴーちゃん……」
「ミィミィ」にぃに……怪我してるの、みぃがけんかしたから?
「ピ、ピー」わかってる、けんかがわるいって、ぴぃ……いいこになるから……
(ヒヨコはらしくしてればいいと思うけどね、あんた焦ってたでしょ、犬とみーちゃんの生きてる時間の差に、大人ぶってるけどやっぱガキだよね、いい子になっても帰ってこないよ、自分で帰りたいと思うまではね。)
「ミゥ」かえらないの?みぃずっとおいてけぼり?
(ずっとか分からないのよ、でも無理矢理引っ張ってくる事は出来る、皆の事忘れてるけど)
「ミゥーミァー」やなのーわすれてほしくないの、むりやりはだめなのー
「ピー」らしく、いきる。わかんない
(本能のまま生きろっての、動物でしょ!人間じゃないんだから、犬に感情引きずられ過ぎ、犬は中身人間の心の入ってるから、ヒヨコとは違うの、一緒にしようなんて考えるな。)
「ピィ」わかった……やってみる
「ンミー」にぃに……あいたいの……
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