犬が渡り歩く異世界

第115話 犬壊れる

　ぴーちゃんが気絶してしまってので起きるまで様子見……喧嘩が終わってればいいんだけど、拗れると大変だ……

(ヒヨコも案外頑固だしなー……)

「でもー姉妹の喧嘩はきゅーちゃんの危機ですぅ、阻止しないとですよね？」

　俺だって……ぴーちゃんが生意気だと思うけどさ、可愛い妹なんだ、バラバラにはなりたくないけど、ぴーちゃんが頑なにここに残ると決めるなら……俺はみーちゃんと別の世界に行くしかない、ずっとは嫌なんだよ、沢山のバイバイをみーちゃんに経験させたくない。

「そうですよね……私も嫌でした……」

「ンミー」ぴぃもいっしょがいいの……

　分かってるよ、でもぴーちゃんの気が変わるまでは何とも言えないから。

「何か深刻？飼い主としての選択は？」

「干渉しないでいいのでは？飼い主と言いますけど、あれはアレで家族みたいなものでしょう？飼い主には入れない隙間がありますよ。」

「ぐっ！か、家族！入りたいー！」

「ワンコさんは沈んでるますから？慰める位はいいのでは？」

「いってきます！」

　ぴーちゃんがまだ怒ってる時、側に俺が居たらまた怒るかもしれないから離れて見ておく、みーちゃんはぴーちゃんに寄り添ってる、喧嘩はしてたけどみーちゃんはそういう子だからね、優しい子だよ頑固だけど寂しがり屋で、俺は甘やかしてる自覚はあるけど、みーちゃんがしっかりしてない訳じゃないのさ。

　俺の言いなりみたいに見えるのはみーちゃんが俺を上に見てるから、ぴーちゃんにとって俺はみーちゃんの下だからな尊敬もされてない、ホロリじゃんか。

「きゅーちゃん、落ち込んでますか？慰めていいですかね？」

　マドロンさんよ……許可制にいつなったの？慰めるなら慰めなさいよ！

(なんでぶちギレてんの。)

「何か怒ってる！ナマ言ってすいません！」

　分からんヤツだな！ダイブしてスリスリー

「はっ！きゅーちゃん！やっぱりそうだよね！うー可哀想に……」

　悔しいが飼い主のマドロンさんには甘えられるのだ、飼い主だから？本能？抱っこしてヨシヨシされると泣きたくなるのは何でかな？

「うー慰めるなら私だって出来るのに！」

「私、飼い主なんで！」

　なに喧嘩してんだよ！慰めろ！

「慰めないから怒ってます！」

「通じあってる！ふんー慰めるもんね！」

　抱っこで揺りかごの様にユラユラー背中にポンポンされると赤ちゃんになった気分ー。

「きゅーちゃんはいいお兄ちゃんだよ？本当だよー皆のボスだし、ちゃんとやってるよ、だから元気だしてね？」

　皆のボスの中にぴーちゃんが入ってないのが問題なんだよねー……

「大丈夫ー大丈夫ーよー？」

　丸く収まるかなー？……ポンポンされると眠くなってくる……

「家族だもん、離れないよー平気だって。」

　そうなればいいなー…………

「大丈夫……ん？寝ちゃった？可愛いぞ！」

「シーッ！」「ご、ごめん」「やっぱ犬がいいな」「え？ナニナニ？」「計画は進んでますか？」「はい、手応えありです」「ナニ？」

　ヒソヒソ話す周囲の声も子守唄、やつぱり俺は精神的に疲れてるのかも……

(みーちゃんの喧嘩が足引きずってんだねー)

　そうかなー………………

　うとうと起きると夜中になってた、顔をクシクシ洗いながら考える、どうかぴーちゃんが怒ってない様に……

(猫と犬がまじりあってるよね？)

　ん？あー顔を洗うとか？みーちゃんの癖が移ったのかも、みーちゃん嬉しいとき尻尾振るし

(素直に思ってのはさ、時間の差じゃないの？)

　時間の差？

(過ごした時間の差、みーちゃんは百年一緒でもヒヨコはまだ数年だよね、一年ちょいじゃない？その差がさ、亀裂になってんじゃ？)

　百年でもみーちゃんは何も変わってないよ？ぴーちゃんの性格は把握しかねてるけど。

(それそれ、まだ把握出来てないのに同列に扱おうとしてるからじゃない？)　

　ちょーまてよ、同列に扱ったら駄目なの？

(ダメって言うか？本人に聞いてみたら？)

　だって怒られそう……

(おにぃだろ？しっかりしろよ？みーちゃんの喧嘩引きずって足が重いんだろうけど)

　そうなのかな……そうか？……そっか。

　百年経って初めてした喧嘩が半年とかお初にしてはオモカッタヨネ。

(そうそうー精神的な疲れは自覚しにくいから、結構キテたんでしょ、次が姉妹の喧嘩で原因が犬ってとこも？)

　おおおおうーんっ泣きたいー！

(お、落ち着け！悪かったから！)

　しばらく精神を落ちつかせて、姉妹はどこだろう？俺は小屋でヨーンと一緒に寝てたけど、姉妹が居ないのです、探知くんー

　……裏庭……え？深夜に裏庭？決闘！？

(やや、まだ混乱してる、朝まで待ってな、喧嘩でも決闘でもない、仲良く寝てる。)

　ほ、本当？神様が優しいとかマボロシー？

(イラッ……慈悲デス……)

　本当にそうならお邪魔したら悪いよね……姉妹が喧嘩する事ないんだよ、本来は俺が悪いんだからさ……あーどうしよ……

　ヨーンの固まりに鼻っ面埋めて考える。

　にぃにって必要かな？おにぃって必要かな？

　みーちゃんを俺の勝手で別の世界に連れ出したのが悪いのかな？

　ぴーちゃんの教育を性格と決めつけてるのが悪いのかな？

　何か全部俺が悪い気がする……姉妹だけで成立するんじゃないか？

(マテマテ止まれストップ！)

　俺……結局自分のやりたいようにやって、他なんかそこまで考えてない、それが悪い？

(ちょ！聞いて？ねぇ聞こえる？)

　俺って自己満足なヤツなんだ、周りは俺に振り回されてるんだ。

(うおいっー！)

　鼻っ面引っこ抜いて目を瞑る。

(ねぇ！きいて！やっべ！姉妹ー！起きて！)

　俺は一人でいい、一人がいい、それがいい

(早く！犬が暴走してるぅー！)

　何処か、遠く何処か、一人でも生きれる世界に…………転移！

(んあっ！…………あああああああっ！)

　バーンっと姉妹が滑り込む。

「ミイッ！？」にぃに！？どこ！？

「ピッ！？」おにぃ！？けはいがきえた！

(……ごめん、止められなかった……転移で何処かの星に行っちゃった……)

「ミ？ミィ？」みぃぜったいおいていかないって、やくそくしたの？なんで？

「ピーピ……」ぴぃわがままいいすぎた……どうしようねぇね、ぴぃのせい……

　姉妹が鳴いてる、泣いてる。

　でも俺にはもう聞こえない。