第56話 日本円でいいんだよ

「中級のダンジョン?えー?冒険者じゃないからわかんないなー……ってギルドで聞けばいいんじゃないの?」


 マドロンの癖に正当な事言った。


「なんか何処かで貶められてる気がする」


「ギルドですかー……」


「何?もしかして冒険者に嫌がらせでもされてるの?私付いて行こうか?」


「いえ……避けられてると言うか。」


「……あーそうなんだ?……絡まれない分マシだと思うよ?うん。」


「ですかね…休憩時間に行ってみますぅ」


「う、うん。」


 その前に、ポンコツこっちこいやー


「あ、はーい。」


「え?」


「え?きゅーちゃんが呼んだのでー」


「あーはいはい、テイね、はい。」


「??」


 はよこいって言ってんだろーがっ!


「はっはい!」


(あんた遊ぶの止めろって……)


 遊んでない、とても、とても大事な事を忘れてたんだよ。


(みーちゃんガラミ?)


 そうとも言う。


(ミネルバ!もたもたしてんな!!)


「ひぃーん!急いでますぅ!」





「テイにしては酷すぎな気がするなー」


「何がテイなんですか?お仕事の手止まってますね、それもテイですか?」


「すっ、すいませんです!!」







「はぁはぁはぁ、な、なんでしょう!」


 そこに座れ。


「はいー」


 で、お前らさ、金幾ら持ってんの?


「え?」(は?)


(それが大事な事?みーちゃん関係ないじゃん!嘘つきー)


 大有りだ、人間には金が必要なんだよ


(動物には関係ないじゃんー)


 ほうほう、みーちゃんに質素な生活しろと……成る程。


(ハッ!そうじゃん!大事!)


 んで、ポンコツは幾ら持ってんだ?


「え?……今持ってるお金ですか?」


 違う全財産の話。


「えーと、この前みたのは……五千円?」


 違うよ、全財産、預けてんだろ?副店長にお金の管理。


「え?だから全部の話ですのね?今月入ってて五千円残ってましたよ?」


 ……え?何で?お前……散財してんのか!!贅沢してんの!?


(ちょ!みーちゃんの為には、それはないわ、酷くない!)


「えー!服も買えないのに贅沢なんかしてませんよー心外です!」


 ……幾ら雑用で使えない馬鹿で、出来れば辞めてほしいと思ってても、副店長はそこまで酷い給金な訳ないだろ?


「きゅーちゃんが一番酷い……」


 だぁほー!何でそれしかないの!?


「え?色々引かれてるんですよ、しょうがないじゃないですか?」


 おいーここの税金そんな馬鹿みたいに高いの!?副店長の嫌がらせ!?


(税金は普通の筈だよ、ここは五パーセントだったと思うよ?)


 おめえ!明細もってこい!見てやる!


「ひゃいー!」


 何で?他の人もそんなに少ないの?


(いやいや、月五千はないわー、何でだろ)


 まぁいいや、明細みりゃ解るだろ




「副店長ー、あの明細ほしいんですけど」


「何故ですか?」


「きゅーちゃんが全財産見せろって」


「……成る程、驚くでしょうね。」


「え?」


「……どうぞ、全ての明細書です。」


「有り難うございますぅ!」


「大変ですね馬鹿が側に居ると……」





「持ってきたよ、全部くれました」


 さすが察しがいいや、そこに置け。


「あ、はい、えと働きはじめてから、あ、並んでるー凄い。」


 どれどれ?初給料は見習い期間と書いてあるから、五万か、ん?次の月からは八万貰ってるぞ?その後も八万だからここの給金は八万なんだろう、働いて結構経つよね?


(んー?あれ?最後の紙なんかマイナスになってんだけど?)


 え!?……何……弁償請求……? 


 お皿に坪にシャベル土産品……なにこれ?ねぇ何これ!?


「え?……へへ……あのこ、壊しちゃったものを給金から引かれてて……」


 (……こんだけ壊して、だから残金五千円、成る程ー……どんだけっ!?)


 おま……ポンコツ以上になんて呼べばいいんだよー!!そりゃ服も買えないよな!出掛けるとき同じ服なの、ずぼらだと思ってたけど!食事代しかないじゃん!!


「だって壊れちゃうのは仕方ないです、物はいつか壊れるんです!」


 シャラーップ!


 さも正当かの様な言い訳してんの!?通用するわけないだろ!?


「へへ、ですよね?」


(おい……笑ってんなよ……)


 冒険代金どうすんの!?準備するの何も買えないじゃん!?


「……うーだって壊れちゃうんですー」


 もう敢えて壊しに行ってるレベルっ


(ちょあたしがお金あげる訳にいかないのよ!馬鹿!ミネルバ馬鹿!)


「ひゃいーん!すいましぇん……」




「どうですか?絶望の淵の気分ですか?」


 のう!副店長!!ぜ、絶望なんてちゃちゃなもんじゃないぜ!


「残念ですよね、私もボランティアで雇っているんじゃないんですよ?引くものは引かないと赤字ですから。」


 そ、そうですね……


「でも、ワンコさん、あなた忘れてません?今の飼い主が誰か……」


 え?ミネルバ……は正確には飼い主ではない、今は俺達のペットで飼い主は……ハッ!


「お呼びしますね。」


 アザーーーースッ!!


「私ペットでしたね、へへ……」


(あんた……どこまで堕ちるの……)





「ちょ何っ何もしてない!してない!」


「別に何もしませんよ?」


「じゃあ何!怖いーよー」


 副店長がマドロンさんを引きずって来た。別に普通に連れて来ればいいのに…


「どうぞ、ワンコさん、店長の代わりに雑用お借りしますね。」


「ひいぅ!!」


 いってらー物は壊すなよっ



「はえ?何?きゅーちゃんが呼んだの?」


 コクコク


「それはそれで怖い……」


 地面にカキカキ「ジャンプしろ」


「……え?」 膝ベシベシ!


「痛いっー!飛びますっ!とうっ!!」


 チッ音がしねーな小銭もねーのか。


「何!何で舌打ちしたのー!」


(小銭目的じゃないでしょ……)


 いいんだよ、これもテンプレー


 カキカキ「金出せ」


「とっ唐突スギテ、カツアゲ……?」


 カキカキ「飼い主だろ、俺達の冒険資金を出せ」


「ええー……マジっすか。」


 カキカキ「ポンコツの残金五千円」


「……そ、それは知ってるけど……だ、だから私が出す訳ね……」


「ちなみに……幾ら欲しいの?」


 カキカキ「全財産」


「それ絶対嘘でしょ!!飼い主に破綻させるつもりっ!?」


 カキカキ「出せる金出せ、膝殺す」


「もはや脅迫じゃんか!出すよーだからもう止めてー車イスはもう嫌ぁ……」


(容赦なし、流石。)


 まどろっこしいのは嫌いなんだよ。


「えー何時までに欲しいの?今すぐ?」


 カキカキ「早い方がいい、冒険に行く」


「ああ、中級ダンジョンね……はい。し、支度金位でいいんだよね……?」


 コクコク


「分かった!明日下ろしてくる!ね!」


 言い逃げしたよ、何もしないのに。


(日頃の行い考えろ……)


 あーあ、ポンコツのせいで疲れたーみーちゃんぴーちゃん癒してー!


(ああっ!!うーあたしも癒されたい)



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