第55話 冒険者と飼い犬と

「あっー!帰ってるじゃん!って早くない?二週間は掛かるかなって思ってたー」


 おう、雑魚と去勢した紳士しか出なかった、報酬もない雑魚ダンジョンとかよゆー。


(…………もう謝んない)


「良かったー居ないと知ると凄いお客さん減って……あんなにきゅーちゃん達が人気なの改めて感謝しますぅ!」


 店長が犬に媚びてんじゃねーよ。


「あら、本当に早いのね?もう攻略したのかしら?途中で辞めたのかしら?」


 カキカキ「雑魚ダンジョンだった」


「ほー!初心者のとこ行ったんだっけ?余裕でも凄いよ、ゴブリンとか倒せる自信がないもんー私。」


 ん?普通の人間はゴブリンも駄目なの。


(そら訓練もしてない一般人のレベルが上がる訳ないでしょ)


 それもそーか、レベルとか?魔法とかレベルとかって大事。


「百年無駄させてすいません……」


「百年なに!?どうしたし」


「いつもの独り言です、イチイチ反応しないで仕事してください。」


「可哀想な言い方しないであげて!」


「そんな雑魚ダンジョンで満足なんですか?まだダンジョンは多くありますけど?」


 そーなんだよなーもうちょっと殺り甲斐のあるダンジョンに行ってみたい。


「え!ちょっと待って!お店に大打撃だよっ副店長として許せるの!?」


「どうですかね、元々ヨーンだけでやってましたし、何時までもワンコさん達に頼るのも良くないのでは?それに、もうワンコさんも一応冒険者ですよ?」


「でもぉー売上が……」


「私は元々野良だったワンコさん達には自由にしてもらってもいいと思ってます。」


 おうー事情知ってるだけに、後押ししてくれてる!何かすっきゃで!皆で足元スリスリすんねん、もっと押してー!崖から落として!


「崖から店長を落とすんですか?訓練ですか?協力しますね!」


「うおーい!何でそんな話になってんの!死んじゃうからっ」


「それも一興ですね、儲かるかもしれません、殺りましょうか。」


「何か殺気がする!違うやり方しそう!」


 バンジージャンプって知ってる?足に紐つけて崖から落ちるんだ、最悪頭打つけどマドロンさんにはちょうどいいと思うんだよ。


「って儲けの提案どうでしょう!」


「殺る気しか感じない!」


「ヨーンにも何か芸でも仕込みますか?元々それなりに人気が有るんですから、儲けの方法なんて簡単ですよ、人間相手には。」


 よっ、ヨーンの危機っ!?

 

 ヨーンの塊が小屋で震えてるのを感じる……あの酷いのはナシで?


「きゅーちゃんヨーンが好きなんです、あんまり怖いことさせたくないみたいです。」


「誰がそんな虐待染みた事をすると思ったんですか?ワンコさん?」


 すっすんません!三匹で震えますぅ!


「感じが悪い、悪者にしようなんていい根性してますわね?」


 してないしてない!フルフルフルフル!


「やめたげてー!分かったから!冒険していいから!許してあげてっ!!」


 ……言質は取ったぜ。


「よろしいのですね、分かりました。」


「あ、あれ?何で平気な顔に戻った……なっなんか罠に嵌められたっ!!」


「店長もチョロいってヤツですね、私と仲間入りですよー?」


「嬉しくないうおー!」



 



 で、で?次は何処のダンジョンにする?


(中級で様子見する?何か魔法が過激なの多いじゃん?もうちょっと抑える訓練しないと危ないし。)


 こいつ……みーちゃんの悪口言ってる!なんてこった、愛好家がそんな発言するなんて!失格だよっ剥奪だよ!


(名指しもしてないのに決めつけないでよっ確かにメテオ打ちたがるのは怖いけど!剥奪なんて殺生なっ!)


「ンミー」すやぁー


 よし寝てる、今回魔法使ったのみーちゃんだろ、俺物理と普通のホーリーしかしてない。


(!そ、それはそうだけど、兄貴なんだから教育はあんたの仕事でしょ?)


 してるじゃん!火炎放射も真っ青なファイアしてたじゃん!


(それがやり過ぎだって言ってんのっ普通のファイアなんてあんな威力ないからね!?)


 ……そうなの?だって今まで魔法がポンコツ過ぎて基準がわからないし、あれが普通だと思ってたわー。


(……そ、それ言われたら何も言えない!)


「全部私のせいです!はいぃー!」


 で、次はどこーって話、俺達ほぼ世界なんて見てない!前の世界もそうだったけど。


(あんたは飼い犬希望だったんでしょ、何で世界が見たいのよ?)


 ……異世界だから?


(ですよねー……何、今は飼い犬より冒険な訳?)


 人間だった頃に外国に旅行とか?そんなのさせてくれるような会社じゃなかったし、録に休みも貰えないし、有給取ろうとしても抜けた穴どうすんだって怒られるし!!旅行なんて修学旅行しかないんだよ!俺にだって世界を見る権利位あっても良くない!?その上で疲れたら飼い犬でまったりしたいんだ!俺はそんなに贅沢な事を言ってるのかっ!!


「ンミッ!!ミァッ」かみかまがにぃにいじめてるの!ゆるさないの!シャーッ


(してないよ!?いきなり暴走したんだよ!?ごごめんね!?みーちゃん!)


「ピィーピョ」ねぇね、おにぃはきゅうにばくはつするの、そういうときはなぐさめてあげるんだよ


「ミッ!?ミィー?」ほんとう!?にぃにげんきだしてほしいのーナデナテするの


 ううっ前世のトラウマがっ!でもみーちゃんのナデナテ嬉しいよーっ!


(な、なんであたし怒られたし……羨ましいし……)


「ピイー」かみさまのがわがまま、ぜいたく、ばか、くたばれ


(最後の二ついらなくない!?)


「あのーそれで次は何処行くんですか?」


 そうだった……


(ま、まあ落ち着いたならいいけど……)


 副店長の許可も下りたし、少し遠くなっても問題ないだろう、嫌になったら帰ればいいし。


「ですね、私ちゃんと毛布とかクッション用意しますっ次こそは快適な旅に!」


 旅行じゃねーんだよ、戦いに行くんだよ!


「ダンジョンでしょう?知ってますよ?」


 ……もーいいよ、何枚でも毛布入れてやるよ!


「わー!有り難うー!買ってくる!」


 ……仕事中ですよー?




「ちょっと雑用さん、どこに行くの?」


「毛布です、ダンジョン用の」


「答えになっていません、だから?」


「買いに行こうかなって!」


「仕事中に?よっぽど暇なのね?お仕事増やして差し上げますよ。」


「ひぃぅー!!」

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