第54話 いざ行かんダンジョンへ

「あーコレどこに置くんでしたっけ…?」


 あっちの小屋ー


「あっ!またヨーンが穴掘ってるぅ!」


 おいおい、そろそろ辞めたれ


((アイサー))


「ぴーちゃん、これ計算出来ますか?」


「ピイ」よゆー


「なんか忘れてる気がします……」


 俺たちの餌の時間な……


「!そうでしたー!」


 ぬおいー!!ちゃんとしよー!?


(手遅れだってお父様も感じてたよ!)


 ダンジョン明日なんだけど!本当に大丈夫なの?俺達初だよ!?


(いいよ、あたしがカバーする……)


 落とし前ー!







「ワンコさん、これが一応基本の冒険者の持ち物です、剣や杖は必要ありませんよね、防具の類いも、後はあなた達が持っていきたい物を入れて下さい。」


 アザっす!ペコペコ


「わー副店長有り難うございますー!」


「……おやつは持って行ってもいいですけど、ダンジョンに行く自覚はあるんですか?ミネルバさん?」


「へ、へいっ!ありますぅ!」


「ワンコさん、あなたがちゃんとしなさいね、姉妹優先で構いません。」


 アイアイサー!


「ええ……きゅーちゃん守ってね?」


 お前がちゃんとしてたらな?


「う、します!案内します!得意です!」


 ハナから嘘ぶっこくなよ!ベシベシっ


「いやー!叩かないでぇ!!」


「店長となんら変わりがありませんね。」



「聞こえてるよー!?」




 さて、今日!ついに!ダンジョンに行くべし!行くべし!


「ンミー!」べしべし!


「ピー」まだついてない、はしゃぎすぎ


 ……ええやんーモチベは大事よ?


「ピィー」ついたとき、つかれたら、いみない


 ドライ杉!ワクワクしようよ!


「ピィ?」これでもしてるし


 あっ、そうなんですか……


「きゅーちゃん!馬車来ました!」





「ねー本当にきゅーちゃん達連れて行くの?ねぇ!だいしょうぶ!?」


「店長は黙っててください。」


「なんでよー!家の看板っ子が心配なの!」


「魔法が使えるんですよ?ミネルバさんよりは心強いでしょう?」


「言いづらい事言わないでよ……」


「まぁ、心配は無駄です、とだけ言っておきますから。」


「な、なに!意味深っ!!」




 あれ、馬車って乗り合いなの?冒険者いるじゃんーやだー!


「ええっ?貸し切りのお金がないですぅ」


 場所さえイメージ出来れば転移出来るのに意外と面倒ー。


 ミーピー俺から離れないでね?冒険者がなにするか分からんから!


「ンミ」にぃにのそばいるのー


「ピー」いもうとをまもるのはとうぜん


「私は!?」


 独り言で変人気取ってるといいよ?


 荷馬車に乗り込むと、みーぴーを抱え込む、寄せ付けはせんぞ!


「馬車って初めてです!」


 ケツ痛くなるぞ、クッション持ってきたか?持ってきてないのは予想の範囲だ。


「うえっ!?わかってるなら用意してくれてもー……」



「独り言で言ってる、ヤバいんじゃ?」「一応警戒しておこう」「てか動物可愛いー!」「めっちゃ警戒してる、馬鹿な冒険者のせいだよ!全く」


 一応まともっぽい、まぁ油断はせんが。


 ガラガラと走り出す馬車、俺は空間庫から毛布を取り出すと念入りに置いて快適な床を作る、みーちゃんは馬車経験あるけど、ぴーちゃんは初めてだよね?酔ったら言うんだよ?


「ピィ……」はきたくない……


「え……毛布……ま、まだある?きゅーちゃん?」


 ないよ?自分の分は自分で用意しろって言われたじゃん、何で用意してないのー?


「だ、だって必要なのが何かわからない……」


 案内人するんじゃなかったの!?知識ゼロかよっ!


(まぁ仕組みだけは分かってる感じ?)


「そ、そうです!入るのは初めてです!」


 うわー頼りないわー連れる意味あんの


「あります!ありますー!」



「ちょ独り言激しい!」「警戒あげるか」「あーん動物触りたい……」


 よし、ポンコツ馬鹿はそれでいい。


「役割が酷い……」


 一日目の夜の休憩には最早警戒レベルアップだよ、冒険者避けに最適だな!


「そ、そうですね……」


 おいー薪集めてこいや、火が炊けないだろ?雑用ちゃんとしろ。


「お店だけじゃなかった!!」


 森に入って行くポンコツ、薪とか期待してないから、用意しといたわ。


 イソイソと薪の準備、魔法で火を付ける。よし、まだ寒さはあるから暖かいやろ。


「ミィ」にぃにがあったかいのー


「ピ」ばしゃ、よわなかった


 おお、ぴーちゃん酔わない体質か良かったのう、まぁ回復すればいいんだけど。



「え、今犬が魔法使った?」「マジか」「凄いー」「可愛いのに天才とか完璧!」


「きゅーちゃん!拾ってきたよ、はい……って何でもう用意してあるんですか…」


 お前を信用してないから?


「酷いーこれ!ちゃんと拾いました!」


 それ生木だろ、乾いてないと火なんか付かないんだよ!


「え!そ、そうなんですか……」


 いいから、はよそれ捨てて火に当たれ。


「有り難う!きゅーちゃん!」



「あれってやっぱ飼い主?」「ペットのが賢いとかどうなんだよ……」「世間知らずなのかね?」


 

 探知してるから、みーぴーは寝ていいぞ、ポンコツもな。


「毛布……」 ない。


 二日目もポンコツが独り言で冒険者避けになった、マジもんの変人完成、冒険者に伝われば避けるやつも多くなるだろう、良くやったな、偉いぞ!


「あ、有り難うございますぅ……」


 乗り合いの冒険者はダンジョンには行かないらしい、同じになっても困るからな。


 と!言うわけで到着ー!ダンジョンー!初ダンジョンー!


「ミィミィ」はつはつー!


「ピ」まもりはかんぺき


「じゃあ!行きましょう!案内します!」


 出来ないこと言うな!!


「うえーん」


 森の中に洞窟、これがダンジョン!……寂れてる気もするけど、いいのコレ?


(言ったじゃん初心者にはって、あんま人気ないし人もそう来ないし良いでしょ?)


 んまあ都合はいいか、じゃ入りましょ


「んあ!待って!置いてかないで!」


 何階なの?此処って


(三階だっけ?全部知ってるわけじゃないから行ってみないと分からん。)


 ねぇねぇ、ダンジョンマスターとか居るの?ダンジョンの定番ー。


(何それ?人なんか居ないよ)


 そーなん、つまんない……


(無茶苦茶言うなし?)


 トテトテ歩いてるけど、モンスター出て来ないし、ゼロな訳ないよね……


「居ますよ!どんなダンジョンにも!」


 お前がいうと信用ないから……


「先輩ー!居ますよねっ!?」


(居るってば安心しろし)


「ミィ!」なんかいるの!


 なぬ!……お……おうスライムさんやんけ……もう見飽きたんですけど。


「あれは攻撃しては駄目なんですーお掃除のスライムさんです。」


 あーそういうヤツ?


 何でピンクなんだよ、無駄にいい色してんの?人の血でそうなったの?


(ちゃうわ!可愛い方が安心するでしょ!)


 人間はしないんですけど……


(え、へ、へぇーそうなんだ……)


 やっぱり感性が違うなー


 ピンクのスライムさんを無視して歩く、歩く、歩く……


「だ、大丈夫です居ますよ!」


 もう二階の階段見えてるんですけど?


「に、二階に居るかも……」


 はぁ……初心者過ぎじゃねぇー?


(そんな上級者向け行きたいなら、かなり遠いんだけど、副店長の許可降りんの?)


 ……聞かないで?


 

 二階の階段を上がる、けど姉妹が届かないので、お乗りなさいな。


「ンミ」ずっといていい?


「ピ」らくらく


 動機が純粋なのと不純が混じってるよ!


「何なら私が抱っこし


「ミ」やだー


「ピ」しんようならん


「姉妹が酷いよぅー」


 はいはい、二階の行きますよ!


「あいさー……」


 俺にも少し高いが上れなくもない。


 二階に到着すると何かの気配が探知に引っ掛かる、スライムさんじゃないな!


 トテトテ歩いて向かうと人形の緑色したアレがいる、ご、ゴブリンさん!やっと出会えたし!ひょー!実物はキモィ。


「ぎゃぎゃー!」


 お、走ってきますよ、どうします?


「え?きゅーちゃんが倒すんじゃないんですか?私がやるんですかー?」


 やらせはせん!


 ゴブリンさんに爪で攻撃ー!サッと避けられた、あれ?意外と素早いのね、こん棒を結界で防いで今度は本気で瞬殺!


「ぎゃ!!ぎぎー」


 ……消えないタイプ?やだ教育に悪いじゃないのー!


(我が儘言い過ぎー!)


 進んで行くとゴブリンさんがわらわら沸いてくる、五十は軽く越えてない?こんなに居るんだ、ここってほんとに初心者用?


(それが来なくて増えて放置されてんだろね)


 悲しいダンジョンだな……


 ささっと沸いてくるがちょ大杉!


「ミー」めておなの!


 駄目だってー!みーちゃん!普通の魔法も使おうよー練習だよ練習ー!


「ミッ?」くんれんなの?わかったの


 みーちゃんのファイアが火をふくが、馬鹿なレベルだから火炎放射器も真っ青な炎だよ!ちょっ!背中からだから!あっつい!にぃに熱いよ!ぴーちゃんが焼き鳥に!!


「ピィ!」やきとりになる!


「ンミー」ごめんなさいなのー


 ええのよ、反省できる子はええ子やで


「わ、私も魔法を使って!」


 何もしないで?おまえだけは予測不可能なんだよ、まじで。


「うっ来た意味が……」


 冒険者避けを立派に果たしたんだ、そこで仕舞いよ、大人しくしとけ。


「ピイー」らくでいいの


 あれ?何かしない?一応魔法使えるでしょ?みーちゃんみたいにファイアしてご覧?


「ピッ」つまらんあいてにはむよう


 ……性格、性格なんだ仕方がない。


(ヒヨコはやる気がないだけだろ)


 ヒヨコだから!いいの!


 俺の物理アタックとみーちゃんの魔法でゴブリン全滅、みーちゃん偉いぞ!


「ンニッ」にぃにのやくにたつの!


 なんていい子……


(感動しちゃうー!)


「ピ!」ぴぃがわるものみたい!


 そ、そんな事ないってば!


 ほら三階の階段だよ!ゴブリンの次はやっぱオークさんですかね!


 イソイソ階段を上がる、探知に引っ掛かるが何か……反応デカクナイ?


(げっ!何でだ?……インキュバスがなんでこんなとこに?)


 自然現象なんやろ?つーか!インキュバス!?教育的指導ー!


「久しぶりのお客さんかと思えば動物とか、女が居るからまぁいいが。」


 女が必要なんだって?ポンコツの出番?


「うえ!?やですよ!インキュバスなんて!殲滅!殲滅!」


 てめぇはやる気がないんかい……


「……生理的に……やだ」


「見てたぜ?動物が魔法とか?何だろうなお前、女渡せば見逃してもいいぜ?」


 あ、そうですか、じゃあどうぞ。


「うえいー!助けて!きゅーちゃん!」


 何しに来たの?ほんとの付き添い?


 ったくよー!俺が相手してやるよ!


「……犬が相手?マジ?笑えるわー」


「ンミィーー!」にぃにばかにするのゆるさないの!!


 みーちゃん全力ファイア!あっつい!!毛が燃えるうー!!


「うおっ!!なんだよ!あっぶね!」


 避けた?全身が炎に包まれたのに無傷?


(あいつ、魔法効きにくいんだよ、やっかいなの、シスターとか神職ならねー楽勝?)


 ……成る程…物理でかちこみじゃー!!


「ピッ!?」かちこみー!?いける!


 ダッシュで近づいて爪でアタック!ぴーちゃんは短い足でキック!


 ヒラリとかわされる……むっ!やるな


「ピ!」なまいき


「おー何、ただの動物じゃないな、何だよお前ら」


 てめぇに教える義理はねーな!


「きゅーちゃんは!神の遣い!特別なんですからね!」


 ねぇ……聞いてた?何で言うの?


「あ……」


「……へえ?凄いじゃん?でも当たらないけど、どうすんの?」


 みーちゃん!あれ行くよ!


「ンミッ」わかったの!


 転移で後ろに回り込む、からのシンクロキック!!



 ダンッっと決まったがよろけただけだ、何こいつボスなの?


「うは転移とか、動物には贅沢だな?」


(んーボスではない、住み着いた感じだと思うけどね、新人を喰って成長してるのかも)


 うーん?どうしよう……?


「ピー」まかせるの


 ええ?魔法?何するの?


「ピイーー!」きょせい!!


 なっなんだってーー!?


「……ん?あれ?……え?」


 インキュバスが自分の体をワサワサ……大事な部分で凍りついた……。


「う、嘘だろ……ない……ない!!」


 まぁ女を食い物にするからな……致命的……。


「嘘だろ!嘘だと言ってくれ!!」


 取り乱してる、チャンス……!


(インキュバスは光の魔法が弱点、さっき神職なら楽勝ってヒント出したのに!)


 なる!て事は?魔法……ホーリー!!


「あっ!!ぐぅっ!!苦しいっ!」


「ミィ!」ついかなの!ほーりー!


「ピー」しょがない、ほーりーしてやる


 三匹のホーリー攻撃に苦しんだ顔でキラキラ来てえいく。


「ばかな……全魔法か……っ!!」


 そしてインキュバスは完全に光の中に消えた……とみせかけて!?


(いや、消滅したから)


 おおっ!!勝利ー!


 皆でクルクルの舞よーっ!


「何も出来なかったですぅ……」


 しなかっただけだろ!


(……インキュバス、こんな初心者の洞窟に居るなんて予想外だけと、あんた達でよかった……。)


 ふはは正義は勝つのだよ!


「ンミッ」せいぎのみかたー!


「ピー」らくしょう


 ……で?これからどうすればいいの?ボスじゃナイんだろ?奥に居るのか?


(ここから先何もない、つまり終わり)


 ……おったまげー!達成感ほぼゼロ!


 ぽーっと魔方陣が現れる、なに!?


(あれに入れば地上に帰れるの)


 ……結果が成功なのか失敗なのかわからんくなってきたわ……


(同感……まぁ攻略したから帰れば?)


 ええ?奥に何かしら報酬とか、ないの?


(この程度のダンジョンで報酬出す意味がわかんない)


 んーだよ!マジでつまんなかった!


(しょうがないの!何回言わせんのぉ!)



 そして初めてのダンジョンはクッソつまらん結果に終わった、あれだよ初心者用だから報酬置かないとか、アレが原因で来ないんだろ!ヤリガイがない!!


(えっそうなの!?)


 なに?ゴブリンとかそんな雑魚相手だからって報酬もなし?だったらダンジョンじゃなくていいよねー!?


(そ、そうだわ……だからあんな放置で繁殖したんだ、ヤバい軽いスタンピード起きるじゃん!)


 はっ!これだから使えない神コンビは!


「うーもっと勉強しますぅ」


(え!コンビは……いや反省しますぅ)


 で?帰りは転移でいいのー?


「そ、そうしましょう!馬車でお尻が痛かったです!毛布とかクッションとか……後はやっぱり櫛は必要かもしれない……」


 取り敢えず真夜中まで待ってから転移で戻る、マドロンさんが庭で寝てたらやべーけど、今の庭はポンコツの寝室だ、人間扱いされてないよね。


((ボスーおかえりなさい!!))


 おう、ヨーンも犬も元気かー


((ボス達が居ないもんで客が減ったって文句いってやした、はい。))


 マドロンさんがヨーンに愚痴ったのか、人気者はつらいわー。


「きゅーちゃん、寝てもいいですか?」


 いいよ、永遠の眠りにつけ。


「ミィー」おねむーどきどきおわったの


「ピィー」あんなのだんじょんしっかく


 せやな、あれは作ったヤツが悪い、誰だよ全くあんな糞みてーなの作ったのは!


(自然に出来るの!他も謝ったじゃん!人間は報酬が必要なんでしょ!!分かったって!)

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