3
誠たちが乗った車は、夜の帳が下りる頃、目的地に到着した。
一度、赤信号を見落としてしまったが、交通量が少なく事なきを得た。
何度か、後ろからクラクションを鳴らされもしたし、ちょっとしたアクシデントはあったが、なんとか無事に到着することができて、誠は心底ホッとした。
誠が下調べをしていた通り、この時間になると、全く人の気配はない。
彼女の夢では、砂浜のあるような所をイメージしていたのかもしれない。
だけど、この港で我慢してほしい。
ここなら、車で海に近付くことが出来る。
車の中から、海がよく見える。
「海に着いたよ」
そう言って誠は、助手席の彼女の顔を覗き込む。
彼女の表情が、ほんの一瞬だけ緩んだように見えた。
他の誰にも見分けられないくらいの変化かもしれない。
しかし、誠には、確かにそれを読み取ることができた。
溢れる涙を止めることができなかった。
どれくらい時間が経っただろう。
誠は、もう一度だけ彼女の顔を覗き込む。
ずっとこのままでいるわけにはいかない。
「それじゃ、そろそろ行こうか」
誠は、ゆっくりとアクセルを踏み込んだ。
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