誠たちが乗った車は、夜の帳が下りる頃、目的地に到着した。


一度、赤信号を見落としてしまったが、交通量が少なく事なきを得た。


何度か、後ろからクラクションを鳴らされもしたし、ちょっとしたアクシデントはあったが、なんとか無事に到着することができて、誠は心底ホッとした。


 誠が下調べをしていた通り、この時間になると、全く人の気配はない。


彼女の夢では、砂浜のあるような所をイメージしていたのかもしれない。


だけど、この港で我慢してほしい。


ここなら、車で海に近付くことが出来る。


車の中から、海がよく見える。



「海に着いたよ」



そう言って誠は、助手席の彼女の顔を覗き込む。



彼女の表情が、ほんの一瞬だけ緩んだように見えた。



他の誰にも見分けられないくらいの変化かもしれない。


しかし、誠には、確かにそれを読み取ることができた。



 溢れる涙を止めることができなかった。




どれくらい時間が経っただろう。


誠は、もう一度だけ彼女の顔を覗き込む。


ずっとこのままでいるわけにはいかない。



「それじゃ、そろそろ行こうか」



誠は、ゆっくりとアクセルを踏み込んだ。

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