第25話 孤立主義者の少年に迫る絶対の危機
山の緑を映す、この清らかな水の流れを傍らにしてつぶやいた。
「今日、ここが僕の三途の川になるかもしれない」
その恐怖に比べたら、母親の着古したスカートと帽子を身に付けて、川のほとりまで来るのは何でもない。
「どうするつもりだ……こんなところで」
堤防に沿って立ち並ぶ、料亭や旅館から丸見えだ。
だが、その堤防からは野球帽を目深にかぶった小柄な男が下りてくる。
「あれか……」
ルイの身代わりになるという僕の申し出を、「首領」はあっさりと引き受けた。
目立つ場所に人を呼び出して、見せしめにするのだろう。
KSGにログインして、チャット入室状態のままにしておくよう指示したのは、たぶん、そのためだ。
そこに参加しているメンバーは、「制裁」のなりゆきを、遠くから監視していることだろう。
でも、ここでルイ……いや、僕に何ができるというのか?
それが分からないだけに、男が目の前に立つと余計に身体がすくんだ。
「あの女じゃないな……身代わりか」
声が妙に甲高い。いや、そんなチンピラヤクザもいないわけじゃないだろう。
そんな連中とも関わっていたのだ、あの「首領」は。
顔も知らない相手とつながるSNSの恐ろしさが他人事でないのを、僕は今さらながらに思い知った。
何をする気だ? 拳の一発? いや、それじゃすまない気がする。
その予感を裏付けるかのように、男は微かな声でつぶやきながら、身体を密着させてきた。
「タダで済むと思うか? そんな真似をして」
思いのほか、感触は柔らかかった。何だか、いい匂いがする。
いや、これが手かもしれない。
それに気を取られた瞬間、身体を重ねたところに刃物の一刺し……。
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