第19話 孤立主義者の少年が花火を見上げる
冷たい大岩から頬を離して、僕はスマホのチャット画面を確かめた。
そろそろ、花火大会も終わる。疑い深い「首領」の出席確認も、ここまでだろう。
だが、メンバーがあちこちに散らばっているであろう花火大会の会場には、最後の最後でダメ押しの一問が放り込まれた。
<全員、最後の花火を見ろ>
その瞬間、遠くで火の玉が光の尾を一条、すうっと引いて、天空高く昇っていった。
僕は思わず息を呑んでそれを眺めていたが、それは会場の誰もが同じだっただろう。
まだあの男と会場にいるなら、たぶん、ルイも……。
考えたくないことが当然の結論として頭に浮かんだとき、それをかき消すほどに眩い閃光が辺りを包んだ。
最後の花火が色とりどりの星のような炎で、巨大な大輪の菊を夜空に咲かせたのだ。
その光が川面を照らして、辺りのものを映し出した。
清らかな流れのほとりの、深い緑の山。
対岸の、巨大な奇石。
その下にいる僕の影と……少女のミニスカート。
花火の閃光は一瞬で消えたけど、川岸で緩やかに揺れる水面には、スカートの中がしっかり映っていた。
思わず目を背けたとき、僕は大岩の上に誰がいるのか悟った。
「来るな!」
叫ぶしか、ルイを止める方法はなかった。
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