第18話 KSG首領が恋の修羅場に策を練る

「バカか、あの娘は……!」

 俺は堤防から離れて、川をまたぐ大橋の上から河川敷全体を双眼鏡で見渡していた。

 花火はもう、思い出したようにしか上がらない。川面はその閃光を映して一瞬明るくなったかと思うと、また暗くなる。

 その中でようやく見つけたのは、川上の大岩に立つ「ルイ」の姿だった。

「危ないだろ……!」

 足を滑らせたりなんかしたら、川にはまる恐れがある。

 チャットを使ってKSGの誰かに気付かせようかと思ったが、再び上がった花火で、大岩の下に誰かがいるのに気付いた。

 たぶん、「ヒロ」だ。

 さっきまでの行動を見る限り、チャットでの問題でヒントを出したら、それに答えるだけ答えて、その場からは逃げ出してしまうだろう。

 そうなれば、「ルイ」も岩から下りるだろうから、問題はないのかもしれない。

 しかし、俺の頭の中で、何か引っかかるものがあった。

 ……これでいいのか?

 KSGでの交流を断った2人が、リアルでは今、お互いにすぐ目と鼻の先にいる。

 このチャンスを逃したら、この2人は永久に離れ離れになるだろう。

 KSGには残るだろうが、俺はそんな関係を作るためにSNSを立ち上げたのではない。

 何か、お互いの存在に一瞬で気づかせるような方法はないものか……。

 そのとき、橋の下で何かが爆ぜるような音がした。恐ろしいというよりは、何か間の抜けたような感じがした。

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