第17話 孤立主義者の少女が本当の恋を探し求める
「ヒロくん!」
辺りには誰もいないのに、どこにもいない。
私の呼ぶ声は聞こえているんだろうか。
暗闇の向こうで流れる川の音は、上がっては休む花火の音の合間に、聞こえたり、かき消されたりする。
居場所のヒントを探そうとしてチャット画面を眺めたけれど、もう「首領」はメンバーの参加を確認してはいなかった。
当たり前といえば、当たり前だ。もう、花火大会は終わるのだから。
残りの花火玉を惜しむように、打ち上げのペースはどんどん落ちていく。
代わりに、聞こえる川の音が大きくなっていった。
「ヒロ君! どこ! ルイはここ! 本当の名前は……尾上累!」
本名まで明かしたのに、返事はなかった。
諦めた方がいいのかもしれない。
そう思うと、さっき差し伸べた手を私に振り払われた男子のことが気になった。
別に、そっちに乗り換えようとか、そういう意味ではない。
KSGの理念に従えば、「あくまでも、事務的に」対応しなくてはいけなかったのだ。
ヒロくんに会えなかった以上、私たちがつながる方法は、チャットの場に2人の名前を並べることだけだ。
私はまだ、KSGを去るわけにはいかない。
そのために今、できることは、あの男子を探し出して丁重に謝ることぐらいだった。
「困ったな……」
あの男子は、あの男子で、私を探して花火会場をウロウロしているかもしれない。
すれ違わないようにするためには、どのあたりにいるのか見当をつけておく必要がある。
その方法を考えながら、辺りをぐるっと見渡してみる。
「……あ!」
川べりにそそり立っている、大きな岩に気が付いた。
ミニスカートなのが心配だったけれど、誰もいなければ、下から覗かれる心配もない。
私は思い切って、大岩の上によじ登った。
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