第13話 孤立主義者の少年が少女のために走る
<ヒロ! 最初の1発はどこから上がった!>
暗闇の中へと目を凝らしていた僕は、川岸に向かって猛ダッシュをかけた。
ビニールシートやブルーシートで取った場所に座り込んでいた家族連れやカップルが、迷惑そうに見上げてくる。
悪いとは思ったけど、そんなことには構っていられない。
打ち上げ場所が特定できたところで、即座に答えた。
<新聞社の看板の真下です!>
満天の星空へ高々と上がった小さな火の玉が、大輪の花を咲かせる。
河川敷一帯から、歓声が上がった。
<正解!>
これで、僕の参加は証明できた。あとは、ルイがいるかどうかだ。
次々に上がる花火なんかそっちのけで、チャットに目を凝らす。
もしログインだけして休んでいたら、強制退会されてしまう。
だが。
「もし、いなかったら?」
僕は辺りに注意を巡らす。
即答できなかったとき、一瞬の差でヒントを出してやるためだ。
花火は次々に上がり、夜空と川面を輝かせる。
上からも下からも照らされた河川敷からの声は、ますます高くなっていった。
そして、前半のクライマックスがやってくる。
川沿いに数条の火線が走ると、炎の滝が一気に流れ落ちた。
いわゆる「ナイアガラの滝」だ。
僕も思わず、チャット画面から目を離して見入ってしまった。
そのときだった。
「ヒロくん!」
僕を呼ぶ声にハッとすると、炎の揺らめきの中、川べりを走ってくるミニスカートの女の子がいる。
この名前を知っているのは、KSGのメンバーだけだ。
すると……?
チャット画面を確かめてみた。
<ルイ! 新聞社の看板の正面に、誰がいる?>
<高校生ぐらいの男の子が1人……ナイアガラの滝に照らされて>
それが僕のことなら、こっちへやってくるのはルイだ。
来るな、と叫びたいのをこらえて、僕は人混みに紛れて逃げだした。
ここで接触したら間違いなく、僕たちはこの世で唯一の居場所をなくしてしまう。
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