第12話 KSG首領がユーザーを監視下に置く

「さて……この中に何人いるかな」

 7月の最終土曜、双眼鏡を手にした俺は市内にそびえる鮮やかな緑の山の麓で、満々と水をたたえた清流を眺めていた。

 ふだんは人がおらず、暗くなるとその辺の草むらで若い男女が不埒な振る舞いに及ぶこともあるのがこの河原だ。

 しかし、今日ばかりは夕方になると、花火見物の客がぞろぞろやってくる。

 KSGのメンバーも、必ずこの中にいるはずだ。いや、いないと困る。

 あまりサボられると、組織そのものがなくなってしまう。

 堤防沿いに並ぶ屋台を眺めながら、俺は日が暮れるのを待った。

 そして、花火大会開始30分前。

 俺は、チャットに参加すると即座に質問した。

<橋の上を今、救急車が何台走った?」

<1台も走ってません!>

 いきなりの引っかけだったが、正解だった。サボってるヤツは、つい台数を答えてしまうものだ。

 これで全体に緊張が走ったらしい。

 俺の質問に、メンバーは次々と答えていった。

 参加者数、約40名。

 KSGを必要としている連中は、それだけいるということだ。

 だから、次から次へと問題を考える俺も大変なのだ。

 さて、何のためにこんな面倒臭いことを思いついたかというと……。

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