第11話 孤立主義者の少年が夏を迎える

 無言のままKSGのチャットに参加する夜は、それから2ケ月余り続いた。

 ルイの名前は、いつもそこにあった。

 だが、僕はどんな話題も振ることはなかった。2人をつなぐのは、あの小説しかなかったからだ。

 期末考査が終わって一息つくと、高校生活最初の夏休みがやってくる。

 もっとも、僕はそれほど期待してはいなかった。自ら孤立を選んだ者に、長い休日は退屈なだけだ。

 ところがそれは、とんだ偏見だった。

 終業式を終えて校門を出た僕がいつものようにKSGにログインすると、首領からメッセージが届いていた。

「オフ会。お互いに気付いても挨拶はしないこと」

 用件の後には、日時と場所が記されていた。

 7月の最終土曜に、近くを流れる大きな川のほとりで花火大会が催される。

 全員、そこに来いというのだ。

 因みに、絶対参加。いるかいないかは、チャットでチェックするらしい。

 まず、その場で起こっていることについて「首領」が1人1人に話題を振る。

 指名された者は、その様子を正確に説明しなければならない。

 サボれば、強制的に退会させられる。来る気がないならKGSから去れということだ。

「もちろん……行くさ」

 退会させられたくないからではない。

 もしかしたら、「ルイ」本人に会えるかも知れなかったからだ。

 何と言っても、「オフ会」なのだから。

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