　俺は、心ならずもこう告げざるを得なかった。

＜ここでそれを宣言するのがどういうことか分かるな？＞

　このＫＳＧに絶対服従を誓わなければ、ふたたびひとりぼっちになってしまう。

　それを、「ヒロ」はよく分かっているようだった。

＜逃げ道を作るつもりはありません＞

　この返答は、「ルイ」との交流を断つということにほかならない。

　同じ趣味を持った者同士のつながりは、ＳＮＳが本来、目的としたことであるはずなのに。

　それを思うと、これ以上は追い込むべきではないという気持ちが頭をもたげてきた。

＜では、ここで特定のＷｅｂ小説について語ることを禁じる。以上＞

　納得したのか、１人、２人と参加者数が減っていく。　

だが、チャットに限らず、性格のねちっこいのはどこにでもいる。

「まだ退勤時間じゃないんだけど」

　机の上のスマホを上司に見咎められて、俺は叱られた高校生のように肩をすくめた。

とりあえず、カバンへとしまい込むことにする。

だが、それを許さない不規則発言が、スマホの画面上にポンと現れた。

＜個人メッセージはいいの？＞

痛いところを突いてくる。大目に見るつもりだったから、気づかなかったふりをしてチャットを終えたのだ。

それなのに。

＜僕のメッセージ、全部確認していいです＞

　過剰反応もいいところだった。

　そこまでやる気はなかったが、イヤとは言えなかった。

＜では、本人の了解を得たということで＞

　だが、よせばいいのにダメ押しの一言が、その後に付け加えられた。

＜ルイからのメッセージは、全部ブロックします＞

　ムダに潔いその一言は、どうか嘘であってほしかった。

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