第7話 孤立主義者の少女が恋の選択に迷う

「尾上ちゃん?」

 遠くで背中を見せていた男子が、いそいそと戻ってきた。

 今日だけで、これで何度目だろうか。何のために私と同じ帰り道を歩いているのか分からない。

 おかげで、「ヒロ」と「首領」のやりとりを見ていることができたのだけれど。

 嬉しかった。ヒロさんがどういうつもりか分かったから。

 それだけで、こんな男子が傍らに立っても、うまくあしらっていける気がした

「ごめんなさい」

 抑えた声で、事務的に答える。それでも、返事は陽気だった。

 何の感情も込めてはいないが、なぜか、こういうのがいい男子もいるらしい。

「そんな……今日、疲れてる? もしかして」

「いいえ」

 オマエに疲れてるんだと言いたかったのだけれど、それができれば何の苦労も要らない。

 コミュニケーションを取って「うまくやる」のが今の流行りとはいえ、困った世の中になったという気がする。

「じゃあ、一緒に」

 私の小さい歩幅に合わせて、足のすらっと長い男子がちょこちちょこ歩きだした。

 これはこれで、困ってしまう。

 ヒロさんが「首領」にどう答えたのか分からなくなる。

 ちょっと気が利かないけど見てくれも性格もいい、この男子との帰り道が二つに分かれるのが待ち遠しかった。

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