第6話 孤立主義者の少年がつらい決断をする

<もう、いいです>

 これ以上、僕と「ルイ」の間に誰にも立ち入ってほしくなかった。

 あんなマイナーな小説、僕たちの他に誰も知るわけがない。

 そこで、また横槍が入る。

<首領が聞いてんだよ>

 確かに、この場を仕切っているのはKSGを管理している「首領」だ。

 でも、ここは今、僕がこの一言を告げるためにある。

<ルイを棄てます。僕たちを、ここにおいてください>

 卑屈な回答だということは分かっていた。

 確かに、ここでKSGを捨てるのがいちばん格好いいんだろう。でも、ログインできなくなったら、ルイがその後どうなったか知ることはできない。現実に会えるわけではないのだから。

 どう思われようと、僕はここでルイを守りたかった。

 もしかすると、これでルイに嫌われるかもしれない。それでも構わなかった。現実に会えても、たぶん、僕は嫌われる。

 このKSGしか、僕がルイと関われる場所はないのだった。

 もちろん、ルイがここを去るというなら話は別だ。そうなったら、僕がここに残る意味はない。ルイも孤立主義者たちもいないところで、本当の孤独を噛みしめて生きるだけだ。

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