第5話 KSG首領は仮想空間にも頭を悩ませる

<自分がやったこと分かってんだろな!>

<ルール守れよ、ルール!>

<真面目にやってるのがバカらしくなんだろが!>

 確かに、極度に親密になるのを禁じた覚えはある。

 だが、そうなってしまった者を排除するつもりも俺にはなかった。

<まず、言い分を聞こう>

 しばらくの間、画面上では「沈黙」が続いた。俺の周りは依然として、机の間を人が行き来したり、隣の席で書類がめくられたりしているのに。

 やがて、「ヒロ」が答えた。

<僕たちには、共通の趣味がありました>

 それは、各々の勝手だ。禁じた覚えはない。

 だが、そんなことにも噛みつくヤツはいた。

<でも、ここでは黙ってろよ>

<マイナーな話題で盛り上がってんじゃねえよ>

 ここで口を挟む隙を与えずに収めるのが、俺の役割だ。

<どんな趣味?>

<Web小説です>

 俺のやりたいことを察したのだろう、すぐに返答したのは「ルイ」だった。

 それだけでも、この2人を問い詰めるのが心苦しくなった。

 しかも、原因になったコトがコトである。

 そういえば俺も10代の頃、小説なんか書いてた投稿サイトがある。これも広い意味ではSNSのうちだ。

 見てくれる人とのつながりを期待したのだが、いつもアクセスは1桁しかなかった。書くのも途中でやめて、それっきりだ。さすがに20代後半になって「小説家になりたい」なんて夢も潰えたので、代わりにSNSを自分で立ち上げてみたわけだが……。

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