第2話 孤立主義者の少年は己の過ちにおののく

 厳しい選択を迫られた次の日、放課後にはもう、僕の心は決まっていた。

放課後の校門を出ると、僕は敷地内では使用禁止になっているスマホの電源を入れる。

 SNSのアプリを起動させて、KSGにログインする。

 1日に1回はアクセスして、チャットに参加するのがメンバーの義務となっているのだ。

 もっとも、今日は事情が深刻に違うんだが。

 IDとパスワードを打ち込むと、KSGのトップ画面が僕を迎える。

<ようこそ、ヒロさん>

 それほど凝った画面じゃない。たぶん、無料のSNS立ち上げサービスを使っているのだろう。

 でも、僕にはそれで充分だった。

 高校に入ってからの1ヶ月間は、すごく楽しかった……というか気楽だったからだ。

 クラスの中での自分の位置を探って、インドのカースト制度みたいに身分相応の態度を取って、キャラを確立する手間が省ける。

「じゃあ、藤塚バイバイ」

 馴れ馴れしく背中を叩いて逃げていく男子がいる。もちろん、そこには親愛の情などない。

 僕を藤塚ふじつか弘明ひろあきというひとりの人間として扱う態度など。

 それでも、礼儀正しく応じてみせる。

「さようなら」

 だが、男子はまだいいほうだ。

 すぐその後を追いかけて行った女子なんかは、これだけだ。

「じゃあ」

 それでも僕は、顔を見ればきちんと挨拶する。 

 あくまでも、事務的に。

「さようなら」

 遠くにあるグラウンドへ部活をしにいくジャージ姿の先生に、こちらから声を掛けるのは当然のことだ。

「お疲れ様です」

 やはり、事務的に。でも、これで充分だった。

 これが、KSGが教えてくれた「孤立主義者」の生き方だ。

 僕は孤立しているんじゃない。それを自分で選び取っている。

 KSGの仲間たちと共に。

 でも、それも今日で終わりだった。僕は、自分の足元を自分で掘り崩すような、愚かな真似をしでかしてしまったのだ。

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