特殊能力

 物語のSFやファンタジーのようなタイトルだが、よくよく考えてみると、納得がいくのではないかと思う。それでは、ひとつずつ説明していこう。


 まずは、瞬間移動――

 これは、Aという地点から遠く離れたB地点まで、一瞬にして移動することである。霊界や神界から、いきなり物質界へと移動してくるなども起きる。


 この能力は幽霊も神様も共有である。しかし、これは魔法ではないので、きちんとした理論のもとで発動される。


 行ったことのない場所へは行けない。なぜなら、心の目で移動する場所と現在地の距離を測り、そこ目指して飛ぶからである。


 しかし、目的地に知っている人物や物がある場合は、それを目印にして飛ぶことは可能である。したがって、守護をしている人間のところには、幽霊や神様はどこにいても瞬時に見つけ出して、飛んできてくれる。


 だからこそ、突然、幽霊や神様がそばに立っても驚かないようにしよう。特殊能力を使って、来てくれたのだから。


 これを応用して、物を動かすこともできる。この能力は神様のみだ。

 失くしてしまったものを一瞬にして自分の手に呼び寄せるのは簡単である。しかし、これは自分の所有物だけである。他の誰かのものは、その人のテリトリーなので動かせない。


 人の物を勝手に触ってはいけないのと一緒である。


 だが、自分の物でも瞬間移動をさせられない時がある。誰かが間に入った時である。これは例えば、自分が忘れ物をして、親切な人がそれを届けてくれた場合、その人のテリトリーに変わってしまい、物質界と同じように探さないと見つからなくなる。


 盗みということは、霊界でも神界でも決して起きない。なぜなら、そのような心根の人は存在することが許されていないからである。ネットの落し物サイトにアクセスすれば、ネットワークも素晴らしい連携が取れていて、すぐに見つかるようになっている。


 この能力は、神様の子供(小学生)までは使うことはできない。もし使えたとしたら大変である。迷子になる可能性が一気に上がってしまうだろう。子供の気まぐれで、好きな場所へ瞬間移動されたら親である神様も大忙しである。聞いたところによると、中学生ぐらいから使える子供が出てくるようだ。


 子供が迷子になった時などは、場合によっては子供に瞬間移動をかけて、自分の元へ呼び寄せることもあるようだ。


 しかし、基本的に人に瞬間移動はかけない。自分の体が誰かに勝手に動かされたら、人によっては不快感を抱くだろう。夫婦や恋人同士ならかけるという話は聞いたことがあるが。


 それから、前の章で話した、瞬間移動ができるのなら、交通機関は必要ないのではという疑問が出てくるかと思うが、神様も人それぞれであり、目的地へ行くまでの道のりを楽しみたいという思いがあるため、利用する人はたくさんいる。


 さらに、携帯電話の使用。これも疑問に思うだろう。瞬間移動できるなら、電話しないで直接会いに行けばよいのではと考えるかもしれない。もちろん、きちんと話をする時は瞬間移動する。しかし、ちょっとした用事の時、もしくはあまりにも遠い場所にいる時は神様にも能力の限界があり、移動することはできないため、電話を使用するということはよくある。


 次は、浮遊である――


 これは飛ぶ力だ。これも幽霊と神様の両方が使える。


 特に条件はない。海でも陸でも山でも、どんな場所でも飛ぶことは可能である。この能力は神様の小学一年生でもできる子はできるほど、比較的簡単な能力である。


 地面と平行の姿勢であったり、打ち上げ花火でも上がるようにピューっと飛び上がって、大げさに驚いてみたり、立ったまま横滑りするなど、さまざまなポーズで飛ぶことが可能である。


 ただし、神様の上にも神様がいると、前の章で書いたが、自身が暮らしている世界より上――高い場所へは行くことはできない。


 本屋の高い棚にある商品を、すでに浮遊の能力を習得している子供が、できない子供のために本を取ってあげるという、微笑ましい光景はよく起こる。そうして、そこから友だちとなる。そのような話はよく聞く。


 大人の神様によっては、非合理的だという理由から歩くことを極端に避ける人もいる。守護する神様が見えるようになった時、いつも一緒に歩いてくれている神様が、自宅や外出先の階段を浮遊して登っていても驚かないようにしよう。


 それでは次、分身――


 この能力は神様のみである。

 通常時に使うことはない。仕事が忙しくて猫の手も借りたいから、分身するなどということはしない。


 大切なことは心である。神界では人も大勢おり、人手不足というものはそうそう起こらない。人の存在はとても尊いもので、同じ人はふたり以上いらないのである。一人で十分なのだ。


 しかし、守護をしている神様は使わざるを追えない時がある。メインの世界で用事があり、物質界でも仕事があるとなると、分身をして、本体は神界に、分身は物質界に行くということはよくある。


 だがこれでは、記憶がふたつの個体の中で、別々になってしまうため、時々ひとつに戻り、記憶をシンクロ――同期させる作業を行う。


 そうして最後、魔法である――


 この能力は神様たちだけに実在する。しかし、できる人はかなり限られている。個性のひとつとしての能力であるから、素質を持っていない人は練習をしてもできるようにはならない。これは他と違って、理論は必要ない。


 例えば、こういうことだ。

 空から突然花びらを降らせる、ということが可能である。


 これを理論的に考えると、かなり手間がかかる。

 まず、花屋に行って花を買ってくる。花びらを一枚ずつはずす。空から振らせる仕掛けを作る。この準備をしないといけない。


 しかし、この下準備がいらないのが魔法である。実際、魔法が使える神様に、どこから花は持ってくるのかと聞いたことがあるが、知らないと答えられた。突然出てくるようだ。


 ということで、やはり魔法なのである。滅多にいないので、私も過去にふたりしか会ったことがないが、男性と女性だった。性別も年齢も関係ないらしい。ただ比較的、非現実的な性格をその人が常識として持ち合わせている傾向が高いように思える。


 次は霊層というあまり聞きなれないことについて話そう。

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