五臭

 当然のことながら、私は怪しい小さな自称女子高生の言うことなんて信じなかった。

 初めて――正確には2回目――会った知り合いでもない子から言われて、はいそうですかと信じるほど私だってお人好しじゃない。

 それでも、例の嫌な臭いがする場所を避けるようにしていたら、翌日近くでお葬式があったなんて偶然。ほら、そんな偶然なんて良くあること。

 それでも私は彼女の言葉を信じることになる出来事を経験することになる。

 前から入院している叔母さんが危篤になったと母から連絡をもらったことがきっかけだった。

 病院の中に入った時から、所々から例の嫌な臭いが漂っていた。

 そして叔母さんの病室に向かうと、それは強くなった。

「彼氏、できた?」

 私の姿を認めると叔母さんは、にこやかにそう聞いてきた。口元に透明なマスクを付けて、幾分痩せていても普通に話している。

「んー、今は仕事の方が好きだから彼氏はいいや」

「そんなこと言ってると行き遅れるぞーって、今時の子はそう思わないんだっけねー」

 嫌な臭いが強い。

 そのせいだろうか。集まった親戚が帰ろうとするのを引き止めたのは。

 それから五分も経たないうちに叔母の容態は急変し……亡くなった。

 急変と共に強くなったあの嫌な臭いは、叔母の死と共に綺麗さっぱり消えていた。

 私は、あの小さな自称女子高生の言葉を信じざるを得なかった。

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