三臭

 昼休み、ランチをしながら同僚の朱美にやたらと事故の話を聞かれた。

 よそみをしていたから見ていないと言っても興味津々。

「もう本当に見てないんだってば」

「でもさぁ、その高校生だっけ? 事故が起きるの知ってたんだったりしてぇ」

 朱美の言うこともあながち間違いじゃないような気がする。次の青信号を待てとあの小さな自称女子高生は言ったのだから。

「それよりさぁ。今日の夜のアリバイ、お願いできるかなぁ」

「またぁ」

 ちょっと、うんざりして私は言った。朱美は彼氏との外泊する時にアリバイを私に頼んでくる。

 大学時代からの友達だし、朱美はもてるのに家が厳しいから仕方なく協力していた。

「今日のランチは、あたしが持つからさぁ」

 つん、と例の嫌な臭いがした気がする。

「付き合いのことは言わないけど、あんまりお泊りが多いと言い訳できないからね」

「うーん、気を付ける。ちょっと彼と電話するから、あたし先行ってるね。これもあげる」

 プレートについていたミニデザートを私のプレートに置いて朱美はレシートを持って席を立った。

 ため息をついてミニデザートのブルーベリーソースのかかったヨーグルトを口に運ぶ。

 美味しいけど、嫌な臭いが気になる。

 だめ、食べてられない。

 私はデザートを残してお店を出た。朱美はちゃんと支払いを済ませてくれていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る