闇の味
エトセン
闇の味
諸君らは「闇」がどんな味なのか知っているだろうか?
…そりゃあ「闇」っていうんだから、苦いに決まってるだろ。
…そうと見せかけて甘いとか?
…いやいや、そうと見せかけておいて、酸っぱいとかか?
ふむふむ、諸君らの考えは全て間違いではない。いや、正解といってもいい。
…どういうことだ?
…どうして全部が正解なんだ?
…「闇」って、そんな変な味なのか?
「変な味」か…
確かに、「闇の味」を知らないヤツはそういうだろうさ。
だがな、「闇」を味わい続けると不思議とその味に夢中になってしまうのさ。
そして、こう思うだろう。「これがなければ生きていけない」とね。
まあ、あくまでも私の考えではあるがね。
…??
まあ、私の話はそのくらいにしておこう。実際に味わってみると良い。
…や、やったぁ?
…ありがとうございます?
…そ、そんな、大丈夫ですっ!
なに、遠慮することたはない。そして、緊張もしなくても良い。
といっても、私も始めて味わったときは、諸君らと同じ様にしていたがな。
では、始めよう。
まず、この黒い物体を必要な分だけ用意する。
次に、これらを細かく挽く。
その次に、細かくなった粉を円錐状になった布に入れる。
布の代わりに紙を使用しても良い。
そして、湯を用意する。このとき重要となってくるのが、湯の温度だ。沸騰した湯をすぐに使うのではない。高すぎず、低すぎず、適温にする必要がある。
最後に、細かくなった粉に適温になった湯を入れて抽出していく。
しかし、一気に湯を入れるのではない。
粉全体にお湯を少しいれ、蒸らしていく。ここを忘れてはいけない
数十秒蒸らした後に、湯を注ぎ始める。
そして、適量になったら完成だ。
さあ、召し上がれ。
…いい香り。
そうだろ、そうだろ。
…苦い。
ははは、私も最初はそう思ったさ。
…酸っぱい。
それはな、この黒い物体がもつ酸味さ。
よく勘違いするヤツは、この黒い物体がもつ本来の酸味と、「闇」が空気に触れて酸化した酸っぱさを同じだと思っている。
しかし、それは違うぞ。これを忘れないようにしなさい。
…甘い?
よく気がついたな。その通りだ。ほんのりと甘いのだ。
よく味わっただろうか。黒い物体の種類や焼き加減によっても、味が変わることがあることも覚えておくといい。
おっと、忘れるところだった。この「闇」には別の名前があってな、「珈琲」と言うのさ。
諸君らが「闇」を好きになってくれることを、そして、この「闇」が広まってくれることを願っている。
闇の味 エトセン @10000
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