第23話 警戒と警告 (津久葉 晴)
鈍感すぎるにもほどがあるだろ。なんで、気付かねえんだよ。見てて気持ち悪い。どっかに行ってくれよ。
けど、そう思ってるのは俺だけだった。俺だってな、女子にモテたかった。羨ましかった。
____
ある日、俺は
「なあ、影野気付かねえ?」
「なにがだ?」
影野は問い返してきた。マジかよ。気づいてない、だと?
「ほら、視線気付かねえか? お前、誰かに監視されてるぞ」
すると、影野は辺りを見渡した。そして、俺を見た。
「また、アイツらか? だが、同じクラスだった奴は数人しかいないし、選択授業が違うし、大丈夫なんじゃないか」
影野の言う通り、前のクラスと同じ奴はいるが、選択授業は違う。それに俺たちの事を気にしない奴らだ。
だけど、それとは違うんだ。違う誰かが見てるんだよ! ほら、また見やがった。なんなんだよ! 気分悪い。俺は咄嗟に俺たちのほうを見てる奴のところに向かった。
「おい、
影野が俺を呼び止めるが、無視した。それどころじゃないんだ。
「なあ、さっきから気持ち悪いんだよ。なんで俺たちをジロジロと見てんだよ」
俺たちを見ている奴の目の前まで来ると、言ってやった。
「え、見てないけど……」
そいつは
「おい、津久葉。やめろって。
突然、影野が割って入ってきた。そして、こいつを
「か、影野くん」
なにが、影野くんだ。なにか裏があるだろ。そんな気がした。
「コイツ、俺たちの、いや、影野をジロジロと見てたんだぞ。今だけじゃない。前からだ」
俺は言ってやった。あの時だって。けど、影野は俺の言うことは聞きはしなかった。
「だからってそんなに怒鳴るな。周りを見てみろ。分かるだろ」
俺は影野の言う通り、辺りを見渡してみた。ここは教室。皆、こっちを見ている。それから、影野に視線を戻す。困っている顔をしている。
やべえ、影野は目立ちたくないんだっけか。あの時を思い出した。
「わ、悪い。俺、頭冷やしてくるわ」
そう言って、教室を後にした。
「ちょっと、待て。そういうことじゃないだろ」
背後で影野の声が聞こえたが、引き止めやしない。俺はそのまま一人、ある場所へと向かった。
ったく、アイツなんだよ。それにしても、影野が気付かないなんて鈍感過ぎだ。同じクラスの奴だぞ。俺だって分かるのにさ。それよりも女子を庇うって意外だな。まあ、影野がいいならいいか。
いや、良くねえよ!
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