第17話誤魔化し (津久葉 晴)

 俺は知られたくない。なにがあってもだ。けど、いつかは知られてしまう。どこまで隠し通せるんだろうな。過去、なにがあったかを。

____


 アイツ、影野かげのが学校に来て、やっと連絡先を聞き出せた。これで、俺たちは連絡を取り合えるぞ! そんな、余裕かましていたせいか、水瀬みずせとの関係に油断していた。突然、影野は言った。

「そういえば、気になったんだが、水瀬はどうしたんだ? いつも、一緒にいたよな?」

 そんな事を言われるとは思っていなかったけどさ、いつかは気付くだろうな。俺はその場しのぎで誤魔化ごまかした。影野はそれ以上聞かなかった。ったく、危なかったぜ。

 その後、俺たちは昼休みだった事もあり、アレを食べることにした。アレとは海老カツサンドだ。売り切れは御免だ。


 それから、数日が経った。俺は一人、影野の教室に向かった。あの空気は嫌だけど、影野を独りにしておくのはまずいかもしれないと思った。また塞ぎ込んで、学校に来なくなったら、と思うとどうしても気になってしまう。大丈夫だと思うけど、まあ、念の為だ。

「よ、影野は居ないか!」

 教室の前まで来ると、俺は影野のクラスの奴に声を掛けた。当然、変な目で見られる。俺、お前らにそんなに悪いことしてるか? と言いたいが、問題起こすと厄介だから言わずに教室を覗き込んだ。すると、影野と視線が合った。影野は頭を抱えている。なんでだよ。

 そして、俺に近付いてきた。

「おい、来る時は言ってくれ。分かるだろ。アイツらの視線が、」

「んなの、どうだっていいだろ! お前は悪くねえんだからさ」

 影野はまだ気にしていた。気にしたって意味がない。傷付くだけだ。傷付くことを知っている俺からすれば、気にしてほしくはない。まあ、影野が気になるならこれ以上言っても無駄か。


「おい、聞いてるのか? 行くぞ」

 俺が色々考えていると、影野が問い掛けている事に気付いた。また、俺の悪い癖だ。

 そういえば、どこに行くんだ? そうしている間に、影野は先を行ってしまう。

「おい、影野待てよ。どこ行くんだよ」

 俺は追いかけながら、言葉を口にする。すると、影野は俺のほうを振り向いた。

 ちょっと待て待て。なんだか睨んでいるような気がする。悪い悪い。って思っても伝わらないか。それ以上なにも言わないでおこう。

 俺たちは影野の教室から離れていった。一度振り返り、未だに向けられる視線に向かって舌を出してやった。お前らなんか怖くねえんだからな。言いたいだけ、言ってろ。

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