第15話 連絡先を (津久葉 晴)

 いつになったら、アイツは学校に来るんだ? 俺はいつまでも来るのを待った。けど、幾ら待っても来ない。俺は、過去に傷つけられた事があるけど、俺自身も傷つけた奴らと同様、人を傷つけてしまうなんてな。

 取り返しのつかない事をやってしまった。悪い、影野かげの。謝ってもその思いは届かない。

 なんて、思っていた事が届くなど思いもしなかった。アイツは直ぐに学校に来たんだ。笑えるぜ。


   *


 それから、何日経っただろうか。覚えていない。突然、アイツは現れた。久々にアイツを見たのは選択授業。アイツと同じ授業があったのが、助かった。

「よ、影野! 元気だったか?」

 俺は授業が始まる前に声を掛けた。影野は驚く事も喜ぶ事もなかった。代わりに俺を睨んでいる。なぜ、睨むんだ。恐いじゃねえか。

「体調が悪かったのか? 無理すんな」

 俺は続けて声を掛ける。

「うるせえ、放っておいてくれ!」

 不意に影野が怒鳴り始めた。俺は突然の事で驚いた。どうしたんだ? いつもの影野じゃねえ。やっぱり、俺がなにかしたのか? だとすると、謝らなければならない。そう思い、謝ろうとした時だった。それは、悪態を付くように聞こえてきた。

「おい、アイツ懲りてねえよな。アレじゃ、殴られるぞ」

「影野には問題を起こさないでほしい。マジ、迷惑」

 俺はふと周りを見渡してみた。すると、影野のクラスのやつがまたヒソヒソと悪口を言ってやがる。またかよ。なんなんだよ。詳しい事は知らないけど、悪いのは影野じゃないだろ。


「分かっただろ。俺に関わったら悪い意味で注目のまとになる。関わってくるな」

 俺が周りに気を取られていると、影野が状況を察したのか、注意をするように言った。関わってくるな、なんて言うなよ。

「なんでそんな事を言うんだよ。影野になにがあったかは知らない。知らないからって、関わるなは違うだろ。いつか、知りたい。それより、連絡先を教えてくれ」

「は?」

 俺は言ってやった。ついでに、連絡先を聞いた。影野は意味が分からないという表情をしている。そりゃ、そうだよな。いきなり、連絡先を聞いた俺自身も理解出来ない。けど、聞こうとは思っていた。

 あの時、連絡先を交換していれば、休みの理由が分かったかもしれなかったから。体調崩してたら、それはそれだ。俺のせいで塞ぎ込んでいるなら、謝らなければならない。

「で、なぜ、連絡先を教えないといけないんだ?」

「いいから、いいから。あ、後でな!」

 ちょうど、授業開始の鐘が鳴ってしまった。休憩時間が短いから仕方ないか。

 それから、俺は嫌な視線を向けられながら、授業を受けた。俺がおまえらになにをしたっていうんだよ……。

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