第4話:群羊潜鬼-SheepSlashCarnival-
▼7/24 14:14:14 西乃沙羅 残刻 !s:to:p!
「野垂れ死にしそうなぐらいに暑い――――酷暑、非常に酷暑」
「一番涼しげで奇抜な格好をしているのはお姉様ですけどね。そんなにお肌を露出させて、虫刺されとかは気にならないんですかぁ~?」
「
「えっ、そうなん? だからあんたはうちの
「どちらかと言うともう片っぽのセンターである銀城さんの方が
(身内や当事者が有名人って、なんだか肩身が狭いなぁ・・・・・・)
どんよりとした曇り模様の下、
都会の
「あたしの41番目の元彼と付き合っていた頃に覚えたのが、今の格好なんだけどさ。よくよく考えてみたら素肌の露出面が多過ぎるし、紫外線でメラニンとか大ダメージを喰らいかねないんじゃないかなぁって悩んじゃうのよな」
濃淡のはっきりとした
そんな彼女――沙羅がぱたぱたと手扇を仰ぎながら、かぶりを振っていた。
ちなみに、普段の腰まで伸ばしたストレートを、頭の上で綺麗に結って
「仮にも指定場所が樹海付近なのにチャイナドレスで
目下夏休みであるにもかかわらず、群青色の学ランをツメまでぱっちりと閉めた、どこからどう見ても“The 中学生”でしかない風貌の、樹矢が応えた。
体感温度37度を越す猛暑のさながら、汗はかいているものの、気温に対する文句や
そんな、どこか涼しげな声の持ち主であった。
「いいじゃん! コスプレ。メイも時々地下ライブの時に衣装着るんだけどぉ、もしかしたらこれが最後になるかも~って、寂しくなって今回は着てきたんだし?」
桃色に染色されたボリュームのあるウェーブパーマを楽しげに揺らし、これまた“The 美少女”に相応しい整った顔立ちの、冥奈が沙羅へと同調した。
彼女の纏う原色豊かなライブ衣装は、“道化師が決死の覚悟で戦場へ赴く特攻服”をイメージして仕立てられたもの、らしい。
しかしながら、当然のように
「洋風と和風をごったにしたその服を着こなしているっていうんだから、流石はアイドルの貫禄だよね」
「や~ん、南波君のそーゆーさらっと褒めてくれるトコロ大好きぃ!」
「ザケんなメスガキ。あたしの99番目の彼氏に色目使うんやめろ。そのロールパンみたいな髪を掴んで引きずり回して校庭のグラウンドを整備してやろうか」
「いやいやいや、僕はまだ付き合うって決めた訳じゃないし、それに返事もしてないし・・・・・・(本気でやり兼ねないからなこの人の場合)」
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つい先日のことである。
アプリケーション【BomB!maP】から現存するプレイヤーに向けて告知があり、加えて特設動画サイト【BomB!TuBe】では、ことの詳細である動画がアップロードされていた。
『親愛なる紳士淑女のみっ、なっ、さ~ん。こんばんわんころ! こんにちにゃんにゃん!! おはこけこっこよぉおおおおおおお!!!』
『ひさしぶりだね? 元気してた?? みんな大好き爆弾の擬人化――否っ! はたまた擬霊化――否いなぁああああ! てっぱァアアアアアアんすらぶち抜く自爆霊のボムみちゃんだよぉおおお!!』
『前置きはこのへんで。今日はね、ワタシからみんなに向けて、大切なお知らせがあるんだよ? なんかねー、今回に限って参加者なアナタ達がすっごいすっごぉおおい優秀ってのもあって、このままじゃ
『きたる7月24日夕刻18時までに、指定の場所に集まって欲しいんだ』
『あ、ちなみに1秒でも遅れたらその瞬間爆死させにいかなきゃならないから気をつけて!』
『追いかけっこをベースとした今までの対戦規則は反故にして、短期間で且つバンバン敗退者が出る仕様に改変する予定だから、心ゆくまで心意気をみせてほしいのっ!』
『詳細は現地にて改めて説明するから。んじゃま、しーゆーねくすとでーいっ、ギャハハハハハハ!』
そんな具合に、半ば強引的に。
どうやら二回戦が始まるらしい。
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ゆえに三人は指定の目的地へと歩みを進めている最中であった。
そもそもが互いに敵同士である彼女らが一同に付している経緯として――まず沙羅と樹矢に関して説明を添えるならば、彼の窮地を彼女が救った後になんとはなしにつるむ様になったことが挙げられる。
規則に則ったオフィシャルな制限時間の持続的な延長が行われる最中、前述の通知が成されたタイミングで。
この3人は勿論のこと、他のどのプレイヤーにも自爆霊が憑依していない状態になっていた。
自動車の往来が一切無い、灼けたアスファルトの道路を、
等間隔に地面から生えたガードレールの姿が消え、
<コレヨリ余物樹海>
<命大事に 胸に手を当てて もう一度考えよう>
雨風に晒され、色あせた白樺の掘っ立て看板に、かような物騒な文言が、剥げかかったペンキで殴り書きにされていた。
「命大事に、ねぇ? あたしの場合、ガンガン行こうぜ――だけどさ。なぁ少年、場所的にはこの辺りなんだろう」
「ですね。殆ど樹海の入り口付近にマーカーがあったので。ん、西乃さん。ひょっとして、位置的にあれじゃないですかね」
スマートフォンのマップから顔を上げた樹矢が指を指した右斜め前方。
元より生えていた植物を根こそぎ排除したかの様に、オレンジ色の金属的な何かが、その場に鎮座していた。
「ふむ。どうやらこれってエレベーターみたいっぽい」
「明らかに閉鎖空間に連れて行かれそうなんだけど、大丈夫かな」
「安心しなってば。何があっても沙羅お姉さんが少年のことを守りきってみせるからさ。ねねっ、ほっぺたでいいしチューしていい? ねぇ、チュー」
「あぁもう、そんなに密着したら暑いってば西乃さん」
「さすがはお姉様。心強いですー! (目の前で南波君が爆死したらどんなお顔をみせてくれるんだろう・・・・・・いかん、まだ我慢がまん)」
かくして、3人は地の底へと続く昇降機に乗り込み、垂直に下へ下へと降りていった。
残る5人のプレイヤーが待ち受ける、地獄の釜底の入り口へ。
誰も彼もが、引き返す選択肢などは、おくびにも出さずに。
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