【6/6 6:06:06 東洞回理子 残刻 --:--:--】
去る1ヶ月程前まで、
切望して、渇望して。
絶望に押し潰れないように、状況の打破を心から希望していた、彼女。
望んだ結果、今は
前述にある諺は「相手を屈服させる、または意に従わせるようにするためには、まずその人が頼みとしているものから攻め落としていくのが良いという
彼女が欲した同盟が仮に「馬」であったとすれば、撃ち落とすべき「将」とは、果たして何に置き換わるのだろうか。
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どんよりと
(喉が渇く。それに悪寒も。とりあえずひっきりなしに、頭が痛い……)
体温計を口に
高熱も高熱、立ちあがるのでさえ辛い。
季節の変わり目だとはいえ、完全に油断していたと、回理子は朝っぱらから後悔に打ちひしがれてしまう。
(かなりしんどいけど、
現在の鬼は北園である。
もうあと数時間で、
(会社は
部屋着から外着に着替えるだけでも
そんな調子で彼女は
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ふらつきがちな
辿り着いたのは、彼女の自宅から南側に2kmほど離れた箇所に位置する、
雨が降りしきり風が吹きすさぶ公園内にて、高低の姿を辛うじて発見できた。
広く大きめの屋根の下のベンチに座り、所在なさそうに両の足をぶらぶらと前後にゆすっており、付近に北園の姿は見当たらなかった。
(あれ? 今日は一緒じゃないのかな)
行動を共にするようになってから、互いが互いの自宅に訪れたことはなかった。
が、それでも必ずと言っていいほど、北園と高低は集合の際には二人セットでやって来ていた。
セットで、ペアで、ニコイチで。
それが今日に限って片割れしか存在していない。
これがまず最初に回理子の感じた違和感その一である。
「あ。おねえちゃんおはよぅ。かさなんかさしてもぬれちゃうし、はやくこっちにきていっしょに、あまやどりしよぅよぅ」
違和感その二――さも当たり前のように幼子に声をかけられたが、かけられたのだが、かけられた訳なのだが。
(この子が話している声を聴いたのって――もしや初じゃないか?)
高低ふるる。甘いものならなんでも口にし、それ以外には心を開かない、推定小学校低学年にしか見えない、あどけない子供。
「うん」か「ううん」としか、今の今まで応じてくれていなかったのに。
そんな存在が、今や回理子をはっきりと
きっと高熱を
「ぐらんおにいちゃんはまだきてないよ。それにしてもおねえちゃん、なんだかしんどそぅだけどだいじょぅぶ?」
「どうやら風邪を引いてしまったみたいで、情けないけどとてもつらい。悪いんだけど今日は一緒にカフェに行くのは無理かもしれないんだ。ごめんね」
ふと
「そぅなんだ。ふぅーん、そっか。そぅなんだ」
若干の吐き気に
彼は雨具を装備しておらず、全身がズブ濡れになっているのが遠目にも分かった。
時間に
崩れきった体調も後押しして、回理子は早くバトンを回し終えて最寄の病院へと通院しなければと考えていた、その時であった。
「もんだいです。『はまやくしろ』くんといぅおとこのこがいました。かれはといれにいきたくて、ものすごくあせっています。さて、いっこくもはやくかれをといれにいかせるためには、どぅすればいいでしょ~かっ」
「え……? いまなんて言ったの」
完全に内容を聞き漏らしてしまっていた。
問題、と言ったのかこの子は。
再び高低から内容を伺おうとした際、北園がようやく目の前まで来、ぱしんと回理子の手に触れて、言い訳じみた挨拶を交わしてくる。
「やぁやぁ本日は真に良い天気だな。余りに良い天気過ぎて我はうっかり寝坊してしまって、それで……」
「こたえは『ま抜け』だよ――ばいばいっ」
北園から回理子へと
高低はそのまま後方に倒れこむようにその場から消失した。
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「なッ……!? ちょっ、え? ふるるちゃん、ふるるちゃん!!」
叫んだ所で、いつもよりほんの少しだけ
スマートフォンを取り出し、アプリケーション【BomB!maP】を起動。
見ると、公園から
(まさか、ここに来ての離反――
『ギャハハハハ! まりちゃんってば久しぶりなのにのっけから大ピンチじゃん! なんだかお顔も優れないみたいだし、これは絶体絶命だね!!!』
実体を持たない、質量を持たない、この世にあらざる自爆霊であるボムみの
回理子は対面にいる北園を睨み付けた。
全くもって彼女の
「まだ交代は済んでいないだろうに、あの
(嘘をついている風には見えない。となれば恐らく北園さんとは組んでいないから――この馬鹿げた事態はあの子の単独行動、なの……?)
考えが考えとして
風邪の誘発する痛みで身体の節々が
「多分ですが……裏切られたのではない、かと……」
何かの間違いではなかろうかと一縷の望みを
高低とおぼしきプレイヤーは既に1km以上遠ざかっていた。
ぐんぐん離れるそれら以外のアイコンも、ここ和楽芭公園からはかなりの距離がある。
――目の前にいる、北園を除いたならば。
お互い向かい合う形で沈黙が続いていたが、ふと北園は独白するように口を開く。
「一つ、
「……今更、こんな時に
彼が何の前触れもなしに呟かれたそれらは、旧大火本帝国海軍は士官養成所である海軍兵学校において、かつて用いられた五つの
真心に反する点はなかったか。
言動に恥ずかしい点はなかったか。
精神力は十分であったか。
十分に努力したか。
最後まで十分に取り組んだか。
そんな彼をよそに、回理子は協力体制と言う名の
「あ奴が裏切るとは、
「だったらあなたが私の代わりに爆死してくれますか? すこぶる体調は優れませんが、やり合うっていうんなら今すぐにでも……」
無論これは彼女の
回理子がその気であるならば、こんな宣言をするまでもなく固有能力【ドッペルアナザー】を発動し、自身のゲームオーバーを免れる為に、北園に
もしくは北園が彼女の挑発に乗ってきたとしても、それでも彼には決して手を出さなかっただろう。
回理子は
一時的にとはいえ窮地から脱するきっかけとなった彼と、敵対するという行為が。
「肉体は衰弱すれど――その心意気は
いいだろう、と。
北園は回理子の手を取り、ぐいっと抱き寄せ、耳元で
「貴様の死の運命を
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