【5/7 10:25:25 東洞回理子 残刻 31:00:27】
二時間ばかりが経過した後。
(さて、と)
が、結局妙案が思い浮かばなかった結果、慌しくも恒常化した月末の経理処理業務へと気持ちを切り替えるべく集中して消化していた、その最中である。
営業部門より
「用件は聞いてないけど
何故代表番号に来ないのかもよく分からなかったし、そもそもが来社の目的・内容を聞いていない時点で仕事の出来ない無能がふざけるなよと心の内では毒づきながらも、取り組んでいた業務が一通り落ち着いたこともあって、
――のだが。
【!他プレイヤーの300M圏内に侵入しました!】
【!アナタ様の位置情報が一時的に抹消されます!】
(おいおい噓でしょ。こんなタイミングで……)
約束の時刻の5分前に通知が鳴ったこともあり、確信はないながらも予感というか、
事前のアポイント無しで自分宛に会いに来ている人間がきっと他プレイヤーなのだと、そう決め付けた上で、彼女は来社対応に
―|―|―|―|―|―|―|―|―|―|―|―|―|―|―|―|―|―|―
連休明け、重ねて月次の初営業日である為、各部署が
既に来訪者は来ていると確認してはいたものの、少し手が震える程度には緊張を隠し切れない自分がいる。
手帳と電卓とを脇に抱え、スマートフォンを確認すると、案の定
通常、鬼以外は他のプレイヤーをアプリ上では感知出来ない仕様であるが、この来訪者は自分をピンポイントに狙っているとしか思えない。
仮にそいつが他プレイヤーを何らかの方法で認識・把握する能力を持っていたとしても、それならば何故鬼の射程圏内に入ったにもかかわらず、その場から離れないでいるのだろうか。
15秒程あれこれと考えてはみたが、どれもこれも推測というか
(どんな
そもそもがこの会合、表向きでは既存顧客の立ち寄り訪問対応となっているが、ゲームの当事者である
様々な思惑が渦巻きながらも、はたして無表情を装いながら扉をノックし、「失礼致します」と声を掛け、いざ会議室へと入室した
酷く、ちぐはぐとした格好をした男が座っていた。
まず普通であれば座るのは椅子であると相場が決まっているが、男は机の上に座っていた。
男の顔の右側は、口元が半分隠れるぐらいに長くすっぽりとした髪で覆われており、反対である右側はバリカンで剃ったかのような五分刈り――稲妻のような紋様が切り込みとして入っていた。
そんな
男は真っ白い厚革のライダージャケットを
腰から下は真っ赤な
この男は立ち振る舞いは勿論ながらも、上から下までどこをとっても
「………………」
「………………」
改めて確認した結果、プレイヤーの位置関係から、どうやら目の前の男が他プレイヤーで間違いなさそうであった。
「………………」
「………………」
(いやいやいやこれどうするのが正解!?)
あと1日と数時間あまりで爆死するかもしれないのに、折角チームを組めるかもしれないチャンスが来たのに、どうしてこんなことになってしまうのか。
相手に敵意を抱かせないことだけに傾倒せんと意気込んできたのに、外見をなぞれば突っ込みどころしかないこの男とは、まず会話が成り立つのかどうかすら怪しい所でもある。
(瞑想? それとも寝ているのか?)
入室の際にちゃんと声はかけた。その筈だと自問し自答する。
数十秒前の過去を回想する。何度も幾度も
(うん大丈夫、客観的に見ても私は何も悪くない……たぶんだけど)
そんな自己完結を終えるか終えないかの間際で、前方より声が聞こえてきた。
「国と国との政治的関係は抜きにして。どうして西国は、我が国が位置する東側へとミサイルを飛ばしてくるのだろうな」
これは己に対する質問なのかそれとも男の独り言なのか、どうにも判断がつきにくい。
あるいは寝言なのかもしれないという
「……地球の自転の向きと同じ方向にミサイルを発射することで、衛星軌道上に乗るまでの消費燃料を抑える為、でしょうか?」
政治的関係は抜きにしてという
少し考えるならば中学生程度の知識で解決に導くことが出来るだろう。
「……ほう?」
ここで、
切れ長の
特徴しかない、個性の塊が擬人化したような具合だなと、
「近頃はかような問いにも答えられぬ
「あ。いえ、そんな。お気になさらず。それよりも
かろうじて、拙いながらも言語による対話は可能であったことに
あたふたと名刺交換の為ケースの
どうやら手裏剣の要領でもってこちらに投げてよこしたらしい(男は相変わらず机の上に座ったままで、体勢は崩していなかった)
[独立行政法人 GalopBrasterS 専任顧問:北園 紅蘭 ]
「きたぞの……ん? こ、こーらん様と読むのですか?」
「フハハハハ! それではまるで聖典だな。
気持ちを切り替えて、
「これは失礼を致しました、それで。北園様。単刀直入にお伺いを致しますが、本日はどのようなご用件で
「案じる所は
今の自分にとってド
「
「我と二人だけなら、確かに意味はなかろうよ。ただしもう一人を足した三名で徒党を組んだとしたらどうであろうかな?」
いつからかいつのまにかいつのまにやら。
気付けば気が付けば気が付いてしまったならば。
彼女の背後に位置する司会者用壇の上に、棒付き飴を
「!?」
入室時に視界に入っていた椅子や机の全ては半透明の材質で出来ているスケルトン仕様である。
いかに小柄な子供とはいえ隠れる
この大会議室自体が
(今の今まで確実に居なかった……気配すら感じなかった。だとしたらこの子は……どうやってここに入ってきたの?)
不可解な事象を目の当たりにしたせいで混乱する
「
このゲームを終わりにしようじゃないかと、
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