小暮静久は叱りたい!

「先生さ、これは何?」


自分でもびっくりするくらい冷たい声に、正座している先生が、びくりと、体を緊張させた。私の冷ややかな視線に、目を泳がせ、顔を青くしている。


「あ、あの……怒ってます……? 怒ってますよね……?」


「――はぁ……」


これ見よがしに、大きなため息をつくと、ついに先生は床に額を付けた。でも、今更、土下座くらいで追及を緩める気はない。私は自覚するくらい先生の泣き落としに弱い。弱いけど、それは、先生に甘えられるときだけであって、今回の件は例外もいいところだ。


「先生さ、私言ったよね? 先生の財布は私が管理するって」


「はいぃ……」


「もちろん、先生が自分のために使う分には文句はないよ。先生が働いて稼いだお金だしね。でも、私のために必要以上に使わないようにって、これ何度目かな?」


だというのに、たまたま先生の部屋のクローゼットを開けると、そこにはメイド服を始め、各種コスプレ衣装。しかも、明らかに先生の体型用の物ではなく、それがパッと見ただけで10着以上。


「い、意見をよろしいでしょうか……?」


「どうぞ」


「こ、これは、静久ちゃんに着てもらって、私が楽しむ為の物なので、静久ちゃんの為に買ったとは言えないのではないでしょうか?」


「そんな言い訳をされて、私が着てあげると思う?」


「ごめんなさいぃ!」


もう一度大きくため息をついた。どうして、この人は私のことになると、こうもダメな人になってしまうのだろう。最初は、お金で私を繋ぎ止めるためと思っていたけど、それは婚約後も変わらず。なぜかと聞けば、びっくりすくらい綺麗な目で「静久ちゃんは女神だから」と、危ない宗教に嵌った人みたいだった。少しくらい改善されたかと思ったけど、そんなことはなかった。


「先生さ、学生時代の制服って持ってる?」


「さ、探せばあると思うけど……?」


「そ。じゃあ、今すぐ着てきて」


「―――――え?」









「静久ちゃん! お願いだから、写真を撮らないでぇ!」


「大丈夫、大丈夫。ホントに生徒だって勘違いされちゃうくらいにあってるよ」


「わた、私、今年で25歳なの! 恥ずかしいの!」


「その恥ずかしい恰好をさせようとした先生に拒否権なんてないから」


「いやぁっぁあっぁぁぁぁあ!」


およそ7年ぶりの制服姿の先生は、びっくりするくらい違和感がなかった。とはいえ、恥ずかしいものは恥ずかしいらしく、涙目で座り込み、サイズの合っていない胸を腕で抑え込んでいる。うん、実にあざとい。これを天然でやってるんだから、同性から煙たがられるわけだよね。


「先生さ、学生自体から身長伸びてないのに胸だけは大きくなってるんだね」


「見ないでぇ……見ないでぇ……!」


やまないシャッター音に、ついに泣きが入った先生。相変わらず泣き顔が可愛い。別に先生を苛めて悦に入るような性癖はしてないけど、うん、写真には収めておこう。ぱしゃり。


「反省した?」


「ぐすっ……ごめんなさい……」


「もう、こんなの買っちゃダメだからね」


「はい。静久ちゃんに相談して買うようにします」


買うことは全く諦めてないらしい。もちろん、私が許可をだすことは永遠にないので、これ以上増えることはないだろう。


「そういえば、あの妄想ノートにさ、やけに制服が指定されてたけど、理由はあるの?」


「あ、あの、あれはあまり見ないでほしいんですけど……」


「あはは、ごめんね。でも、先生の性欲も管理しておかないと、酷い目にあうのは私だから」


実際、イメプがやけに増えていることもあって、今回の摘発に至ったのだ。読んでいるこっちも恥ずかしいので、ダメージはお互い様。


「鬼畜な静久ちゃん……ちょっといいかも……」


「何か言った?」


「なんでもない! え、えっと制服、制服だよね! 単純な話なんだけど、静久ちゃんも知っての通り、暗い青春を送ってきたから、その心残りって感じかな」


まぁ、予想の範疇の回答。気にしてはいないとは言っても、やっぱり、心残りはあるんだろう。正直、青春を神聖視しすぎな気がするけど。学校内の女社会はそんなに良いものではないけど、ここはひとつ夢を見せ上げようかな。


「先生……じゃないくて、先輩にしようか」


先生の豊満な胸に手を伸ばし、制服の上から鷲掴みにする。別に大きい胸が好きなわけじゃないけど、この胸を私だけが自由にできるのは、優越感がある。


「静久ちゃん、これは……?」


「ん? ほら、先生と私の制服は違うけど、そこは妥協して、今だけ、先生の後輩になり切ってエッチしてあげる」


胸が張りすぎて、臍が露出しているサイズの合っていない制服の上から、ブラを外して、露出してるお腹部分から、手を制服内へ潜り込ませる。柔らかくて重量感のある胸に指を食い込ませるように揉みながら、未だに混乱している先生……ではなく、先輩の唇を割って、舌を入れた。


「んっ……はぁ……。いたいけな後輩を部屋に連れ込んで、こういうことしたかったんですよね、先輩」


「し、しじゅくちゃん……♥」


「かわいい。私も、先輩はきらいじゃありませんし――――一緒に大人になっちゃいましょうか?」


耳元で囁くと、先生が産毛を逆立てて身を震わせる。そういえば、耳が性感帯って言ってたっけ。胸を弄ぶ手を増やし、押し殺したような喘ぎ声をあげる先輩の耳朶を甘噛みしては、舌を耳の奥まで入れて、面白いように反応する先輩を、からかうような言葉で攻め立てて。それ悦しくて、気持ちいと感じる私も、すっかり興奮しきっていたようで、何かに怒っていたことも忘れ、快楽に身を任せた。







後日、このことを後悔するような目に合うことを、私はまだ知らない(涙)



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