椎名小百合は我慢できない!

"耳かき"とは、実質的にセックスでは?


待ってください。分かります、私も歯磨きがセックスなのでは?なんて馬鹿正直に告げられれば、逃げるか警察を呼ぶか、慈悲のある判断として救急車を呼ぶかでしょう。でも、でもですよ、穴(耳)に棒(綿棒)を挿入する行為なんですよ?おまけに、奥まで入れて掻きまわされちゃう(耳垢を取っている)わけなんですよ?これがセックスじゃなければ、いったい何がセックスだというんでしょうか。


―――こほん、少々熱が入ってしまいました。もちろん、こんなことは最愛の静久ちゃんには言えません。いくら私がボッチで処女を拗らせてきた喪女歴の長い世間知らずでも、これを言えば引かれることくらいは分かります。


私だって最初からこの真理に気づいていた分けではありません。最初は、静久ちゃんが疲れている私を労うという趣旨でした。ソファーに腰かけた静久ちゃんの膝に頭を乗せ、耳かきをしてもらう。よく、創作物で恋人たちが行う行為の一つで、付き合って間もないころの話だったので、浮かれていたのを覚えています。そして、真理を悟ったのです。


「先生さ、耳かきされるの好きだよね?」


「そ、そうかな? あっ、でも、教師は、小さい声も聞き逃さないようにしないと仕事に支障が出るから、いつでも耳は綺麗にしておきたいかな」


もちろん嘘です。全国の教師の皆様、申し訳ありません。私は聖職者を名乗りながら欲望に負けた、性職者です。


「ふーん。先生って、相変わらず真面目だねぇ」


感心したような声に、罪悪感がチクチク私の心をいじめてきます。でも、これから訪れる至福の時間の前には、私の自制心なんて障子の紙より薄いのです。特に今日はお泊りの日で、いつもは制服姿の静久ちゃんは、Tシャツに短パンと、とてもラフな格好なのです。頭を乗せる太ももはむき出しで、白くて柔らかくてすべすべした太ももに頭を乗せました。


「それじゃ、始めるから動かないでね」


「――――ッ!」


「あっ、ごめん、痛かった?」


「だ、大丈夫。びっくりしただけだから……」


期待しすぎて過敏になりぎた耳は、綿棒が触れただけで、微弱な快楽を伝えてきます。今度こそ、私の中に入ってくる綿棒が、奥まで入ってきては、抜かれるたび、ゾクゾクが強くなって、顔が赤くなっていると自覚できるくらい、顔が熱くて、容赦なく押し寄せてくる快楽に、もう私は我慢できませんでした。


「――ふぁんっ♥」


「先生さ、変な声ださないでくれる?」


「ご、ごめんね……耳かきって意外と気持ちよくて……♥」


性行為です。大好きな人との、セックスなんだから気持ちよくて当然なんです。

そんなことを、伝えれることは、流石に憚れる私は、取り繕うような言葉で誤魔化します。


「ふーん。じゃ、今度私もやってもらおうかな」


大歓迎です。静久ちゃんとこの快楽を共有できるなら、もう死んでしまっても悔いはありません。


「あー、でも最近、先生なんだか変態っぽいからなぁ」


「―――――っ♥」


変態と、罵られた瞬間体がびくんと小さく痙攣しました。いったい何が起きたのか自分でもわからず、続けられる耳かきは、そんな私に追い打ちをかけるように、快楽で頭をぐちゃぐちゃにされて。


「ごめんごめん、冗談だよ先生。だから、そんなに怒らないでよ」


顔を赤くしている私が、怒っていると勘違いしている静久ちゃんは、優しく頭を撫でてくれました。手が止まったことで、少しだけ冷静になった頭は、最低の事実を突きつけてきました。すなわち、"変態"と言われて興奮してしまったという事実。静久ちゃんは、耳かきをしているだけで、私一人興奮しているというシチュエーションが、より一層被虐心を奮わせて、


「はい、終わり。次は反対側するから、こっちむいて」


大勢を入れ替えると、そこに見えるのは静久ちゃんのお腹を覆っているTシャツ。程よく腹筋がついてて、すべすべで柔らかい静久ちゃんのお腹。おへその上あたりにちょっとした性感帯がある静久ちゃんのお腹。


「ふーっ♥ ふーっ♥ だめなの、にぃ……♥」


―――最低です。最低です最低です最低です……でも、相手が静久ちゃんだからという免罪符が、本来受け入れがたい快楽を許容してしまいます。

もう、私の頭はピンク一色でした。右側の耳には、左耳に比べると汚れているようで、何度か綿棒を交換しては、少し強めに擦られて。喘ぎ声を抑えるために静久ちゃんのお腹に顔を押し付ければ、静久ちゃんの匂いに理性が焼き切られそうでした。頭の中では、”変態”という言葉が何度も再生され、ダメだと思えば思うほど、沼にはまってゆくようでした。


「先生? なんだか、息が荒いけど大丈夫?」


「はひ♥ だ、だいじょ――――――――あぁあぁあぁあああッ♥」


「え、え? 先生? 先生?」


不意に掛けられた声に、思わず体を起こしてしまいそうになり、奥まで入っていた綿棒が鼓膜に触れたことが止めでした。本来、痛みしか感じないはずですが、ピンク一色に染まった頭は、痛みを痛みだと認識せず、鋭い快楽に変換して、私は恥も外聞も忘れ、静久ちゃんの膝の上で、あられもない声を上げて、ビクビクと体を震わせてしまうのでした。






「はぁ……つまり、耳が性感帯で、気持ちよくなりたかったけど、私に引かれるのが怖かったから黙ってたと」


「はい、その通りです」


落ち着いた私は、突然、矯正を挙げながらイってしまった私に驚いている静久ちゃんの前に正座をして、事情を説明しました。冷静になった私は、羞恥心で死にそうです。最愛の恋人の前で、恥ずかしい性癖を暴露する気持ちといえば、私の気持ちは理解できるはずです。


「先生さ、変態っぽいって思ってたけど、本物の変態だよね」


「返す言葉もありません……」


土下座でした。決して、”変態”と言われて緩みそうな顔を見られたくなかったわけではありません。本当です。本当に本当なんです! 信じてください!


「もういいよ、誰にでも性癖の一つや二つあるだろうし、正直、耳フェチ?程度で逆に安心した」


「うぅぅぅ……本当に、ごめんなさい」


赦されてほっとしている反面、もう、耳かきはしてもらえないと思うと、気が落ちます。あぁ、最後に、冷たい声で言葉攻めされながら耳かきをしてもらいたかったです。―――――――チガイマスヨ? モチロン、ジョウダンデスヨ?


「それじゃあ、ほら、続きするから頭、乗せて」


「――え?」


「なに、もうしなくていいの?」


「い、いえ! 是非お願いします!」


「はいはい。でも、本当に危ないから、急に動かないでね」


「あ、あの、引いてないの?」


「言ったでしょ? そのくらいの性癖で安心したって。その、一応婚約者なわけだし……それくらい、受け入れる寛容さくらいはあるよ」


照れ隠しに明後日の方を向いた静久ちゃんが、可愛くて尊くて、もういろいろ我慢できずに、ソファーに押し倒しました。


「静久ちゃん、エッチしよう」


「怖い怖い怖い怖い! なに、いきなり発情してるの!?」


「今日はお腹を可愛がってあげたい気分です」


「なにいって、ちょ、ちょっと、脱がすの早い!あぁ、もう! せめて、ベッドで、あぁんっ……♥」


この後、滅茶苦茶セックスしました♥(朝まで)

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