椎名小百合はやっぱり貢ぎたい!

「ねぇ、静久ちゃん。私たち、卒業したら結婚するわけだから、もう婚約したといっても過言じゃないよね」


「うん、まぁ……否定はできないね」


左手の薬指で輝くピンクダイヤ。その宝石が収まっている指輪を見るたびに、口元が綻びます。当然です、最愛の静久ちゃんが私のお嫁さんになってくれるという証拠です。これで喜ばないはずがありません。


「それで、婚約したから、どうだっていうの?」


「最愛のお嫁さんにプレゼントを渡すのは当たり前だよね?」


そう。私は、静久ちゃんに貢ぎたいのです。理由? 

神様にお金なんて必要ないのにお布施する信者と同じです。


「じゃーん! 静久ちゃんに似合いそうな服とかアクセとか財布とかいっぱい買ってきたの!」


「先生さぁ……いやいい。とりあえず、クーリングオフが効く間に全部返品してきて。一つでも残ってたら、次のお泊り話だから」


「そ、そんな! 私は、何を希望して生きていけばいいの!」


美味しそうなものを食べている静久ちゃんの、静かな笑顔とか!

ベッドの上で乱れる、静久ちゃんの艶姿とか! 

それがない世界なんて、存在している意味がありません!


「はいはい。お嫁さんは、財布の管理をするのも仕事のなの。だから、先生の財布は今後一切私が管理するから、変なものは買ってないこと。約束破ったら、エッチ禁止だからね」


結局、買ってきたものも予約していたものも全部返品させられ、静久ちゃんに貢ぐことはできませんでした、ぐすん。


「先生……? なに、にやけてるの?」


「ち、違うよ、静久ちゃんに怒られて嬉しいとか、そんなんじゃないからね!」


「先生、お願いだから、変な方向に性癖拗らせないでよ」


呆れたように、私を見つめる静久ちゃん。

年下の女の子に財布を管理されるのは恥ずかしいですけど、でも、静久ちゃんが私の生活の一部になっていくみたいで、静久ちゃんが本気でお嫁さんになってくれるんだと実感がわいて、とっても幸せな気持ちはやっぱり、抑えきれなくて



「静久ちゃん、せめて、このドレスだけは受け取ってください!」


「だーめ、だって言ってるでしょうが」


「あだっ!? ぷっ、うふふふ……」


「え、なんで笑ってるの、気持ち悪い……」


小突かれて喜んでいる、静久ちゃんは思いっきり引いていました。

何やら変な誤解が生まれそうでしたけど、ベッドの上でしっかり話し合い、誤解も欲求もすっかり解けました。私は今日も、幸せいっぱいです。

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