第6話 斉藤人気者になる

とりあえず、無事学校に着いた。無事という言葉が正解なのかはわからないが。学校についたらついたで、斉藤の周りは騒然となった。

 その端麗な容姿に誰もが振り向き、こんな子、この学校にいたっけ?みたいな眼差しがチクチクと斉藤の後頭部に刺さっているが、本人はマイペースで我関せずといった様子でズンズンと俺の前を歩く。

 後ろから背中を叩かれ振り向くと、聖也が俺を通り越して明らかに斉藤を見ていた。

「なあ、あの男装の女子誰?お前、知り合いなんだろ?」

おい、聖也。目がハートになってるぞ。

「残念ながら、あいつは男だ。」

そして鬼畜みたいなアンドロイド野郎だ。

「うっそ?マジ?あんな可愛い顔してるのに」

「大輔、何やってんだ。早く来いよ。」

斉藤が振り向いて俺を呼ぶ。それをまだ羨ましそうに見ている聖也。

聖也よ、お前にもあいつの正体を見せてやりたいがやめておこう。

そして、斉藤。何故お前はそんなに偉そうなのだ。まるで、ずっと前からこの学校に通ってるかのごとく、スイスイと戸惑う事なく、俺のクラスに向かう。

ハイスペックにもほどがあるぞ、斉藤。

俺のクラス、2年3組に行く前には必ず2組の前を通るので、必然と俺の視線は彼女の姿を探す。目でその存在を捉えると、俺は幸せな気分になった。

桃花ちゃん、今日もすげえ可愛いな。

すると、先を行っていた斉藤がくるりと振り向いた。

「大輔、残念だが、あの子のことは諦めろ。」

おいおい、何言ってんだこの野郎、今ここでそんなこと言うな。

「バカ、黙れ!お前、マジ殺すぞ」

「それはお前には不可能だ。」

「っつうか、何でだよっ!」

俺は斉藤の口を押えながら、囁き声で訴える。

「あの子、好きな男いる。お前じゃない。」

俺は口から魂が出そうになった。

最悪。そんなこと知りたくなかった。

「お前、マジ、鬼畜だな。」

俺が涙目で斉藤を見ると、キョトンと首を傾げた。

悔しいが、クソ可愛いわ、お前。

無駄に何も起こらないままハートブレイクしてしまった俺を尻目に、斉藤の美しさに皆が目を奪われた。

まるで女の子みたい、可愛い。

斉藤は休憩時間にはあっという間に女子に取り囲まれた。

矢継ぎ早なくだらない質問に飽きたのか、斉藤は黙って教室を出て行った。

あまりの愛想の無さに、女子はあっけにとられているようだ。

「斉藤、お前、あの態度はないだろう。せっかく女子が話しかけてるのにさ」

「実にくだらないことばかり質問してくるから。彼女、いるの、とか。意味がわからん。それを確認して何になると言うのだ」

「それは彼女たちにとっては一番大切な質問だからだよ。お前に彼女いなければ、お前の彼女になるチャンスがあるかもしれないわけだろう?」

「皆無だな」

「切り捨てるな~、お前」

「俺には無駄にしている時間などない」

「いやいや、学校に来るって十分無駄な時間だと思うのだけど?」

「腹が減ったな」

「おい、話をごまかすな」

「ちょっと補給してくる」

「ってまたマザーエネルギーかい。もう授業始まるぞ?」

「すぐ帰ってくる」

そう言うなり斉藤の姿が消えた。

「ただいま」

「ってマジで秒で移動できるんかい!遅刻知らずだな!」

「まあな。何せ俺は最新バージョン」

「能力の使う方向、間違ってねえか?」

「気にするな。授業、始まるぞ?」

そう言うと、斉藤はスタスタと教室に戻って行った。

マジで目的はなんなんだ。

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鬼畜兵器 斉藤 よもつひらさか @yomo2_hirasaka

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